SP

森川夏子

はしがき

―これを焙煎珈琲研究所の方々と、そして、読んで下さる皆様に感謝を込めて。


 生活という長い旅路においての休憩所であり、お食事処なのかもしれない。

 そして、人々が憩うことで…そこは、自然の集まりになり。安らぎがうまれる。


 孤独を感じたら……、気に入った馴染みの喫茶店に、ふらりと立ち寄ってみる。

 好みの店員さんが目的でも、美味しい珈琲が目的でも、なんだって理由はいい。限定スイーツや、気まぐれスイーツを目的にでも、いいのでしょう。

 

 訪れる理由は、自分の想うもので…ここは雰囲気が良いなとか、なんとか…、

 そんな理由でというのでも、良いと思うのです。

それは、自分の心が語りかける本音なのだからと思う…。


 自分の感覚や、感性は、嘘を吐かない。


 自分の居場所は、自分の二本足で歩いて行くことでしか、何も見つけられない。


 そうやって、自分の居場所をふらりと探す。


 そこで…日常から、ほんのすこしだけ距離を置く。


 離れてしまう。

 

 休むことも、……大切だと想う。

すこしだけ、勇気をだして、一休みしてしまおう。


 恥ずかしいとか、迷惑になるからだからとか、それよりも……。


 壊れたら、歩けなくなってしまうのです。


 あなたという存在は、あなたしかいない。

休んでからでも、遅くは、ないような気がします。


 ひとやすみ。ひとやすみ。


 他人の庭に咲く花たちに嫉妬や、憤怒してはいけないのです。

 それを綺麗ねと微笑むくらいで、良いのになと思ったのです。


 もう、だれも、なにも、失いたくない。そう、願っている。祈っているだけなのです。


 目の前に存在するあなたと、私と、誰かと……互いが互いの手を取り合うことを信頼のうえで支え合う事を想うと、人間とは、協力し合う事でしか、案外、救われない生物なのかもしれないと考えるのです。


 誰一人、欠けても寂しいし、辛いものです。


 人間が利害の関係をなく、支え合うのはとても難しい。時代の空気感が語られる世界。

 そもそも、人間に隠されたケモノのような慾望が存在する限り、難しいどころか、現実させるのは、夢物語なのかも知れないのです。


 「それは、簡単なことじゃないんだよ…。」


 誰かの孤独や弱さにつけ込むような人間が、その人の涙を這い登り、狡猾な蛇のように、鋭い眼光でギラギラと狙っているのかも知れないのです。


 それでも、人間が垣間見せる信頼に神々しいなにかを信じたいと祈ったんだ。

 欲張らないように、ただ、一生懸命に地味だと言われても、バカみたいだなと、大声で笑われても、私たちは…歩いて行くしかないんだと思うのです。


この路は、どこに通じるのだろうか? 

どんな景色が、待って居るのだろうか?


 信じてみたい。


 人間の信頼を…信じてみたい。


 その時に声をかけてくれた人間と人間の出会いに、そして一杯の珈琲の贅沢を味わう至福に…。それは、ひそやかな楽しみであれば、良いとも思うのです。




 自分の居場所は、自分で見つけてゆける。

そこがきっと、あなたという自分にとってのSP。


 SP『スペシャル・プレイス』になるのですから……。

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