魔力ゼロでもやれるんです。
無気力0
第1話 常識を覆す者
だれだよ!バナナ捨てた奴は!」と勇士ゆうじは呟いた。
声は響く事なく、闇に吸い込まれる様に消えていった。
溜息をつき、広大な草原に1人、大の字になり寝そべる。
肝だけは座っていた。
遡る事、数時間前、いつもの様に、夜街に繰り出し深夜徘徊という名のパトロールを連れと行っていた。
我が物顔で、肩で風を斬りながら颯爽と歩いていると抗争中の相手にでくわし喧嘩が始まった。
良くある事だったので、いつも通りいつもの様に喧嘩をしていた。
足元の捨てられたバナナの皮に足を滑らすまではーーー
見事に、全体重をバナナを踏む足にかけており、マリオカートもビックリなほどの大スリップが行われた。
抵抗が失われたかの様に、バナナを踏み付けた足は、前方に払われ、そのまま全中をし気付いた時には視点の上下が入れ替わっており、体操でもしていたらそのまま一回転も可能だったかもしれないが、そう問屋は卸さず、そのまま後頭部を地面に打ちつけようかとなった瞬間、世界がゆっくりとなり、これが走馬灯か?と思うも、そんな事よりここにバナナを置いた奴絶対許さないと余計な事に気を遣っていたら、何も過去を振り返る事なく鈍い音と共に視界がブラックアウトした。
そして、目が覚めたのだった。
俺はどこに来たんだ?と思うも、広い草原では何もわからない。ポケットに手を突っ込み携帯を探すも中には何もなかった。
「どうすんだよ、これ...」
一人呟かずには居られなかった。
しかし、このままここに居ても拉致が明かない事はわかっていたので、ささっと立ち上がり、とりあえず歩く事にした。
歩き始めて、数時間経った頃、前方に森が見えてきた。
そして、この時気付く
「そう言えば、こんなに歩いたのに全然疲れねぇな。喉もかわかねぇ。なんかスゲェなゲームかよ」
そんな不思議な感覚に包まれていた。
事実、ハイペースでの徒歩移動を数時間していたのにも関わらず、喉が乾くどころか一切の疲労感もなかったのだ。
そして、疲れを感じない事を良い事にそのまま深い森へと足を踏み込んでいった。
森の中は、所謂ジャングルの様な場所で大きな木が生茂り、ツルの様に伸びた木々が絡まりあい、そして沢山の葉が空の光を遮っていた。
「暗いなぁ」と暇なのでぶつぶつ独り言を言いながら、そして鼻歌まじりにルンルンと歩いていた。
「出て行け」
ルンルン〜
「出て行け!!!!」
大きな叫びが頭に響いた。
「!?!?なんだ!?敵か!?」
と拳を構えて周囲を見渡すが、人の気配みたいなものは感じられず、そのまま180度ぐるりと見回しても何も居なかった。
「気のせいか...脅かしやがってよぉ」
「気のせい違うわっ!!!」
耳元で大きな声がして振り返ると、小さな妖精がそこにはいた。
「人間の分際で何を無視しとんじゃい!」
と妖精は気分良く森を抜けようと歩みを進めていたのを阻止しようとしたのだった。
「なんだお前?小さい虫みたいだな」
素直な感想だった。
「なっ!?幻覚がきいとらんのか!?」
この妖精は幻覚を使い、相手の天敵とされる存在に見えるように仕向けていたのに対して効果がなかったのだった。
「はぁ!?虫みたい...ティンカーベルみたい
だな、よく見たら、うん。そんな感じだろ」
「ティンカー?なんちゃらは知らんが、まさか人間でこれが通用せぬ奴がおるとは、たまげたわい」
「所で、お前はなんなんだよ、俺はさっさとこの森を抜けて街にいきたいんだが?」
「んなっ、平然としておるか...まぁよい、街かそれはかなり先になるの、なんせここは死の森と言われる一度入れば戻れぬ森じゃからの、お主も、もう出られぬのじゃよ」
事実、この森は人々の侵入を数百年と妖精によって拒み続けてきたのだった。
一度入ると方角を失い、魔物に襲われ命を落とす末路だけがそこにはあった。
それをよしとしなかった妖精達の手によって、追い返され侵入を防いでいたのだった。
そんな事とは露知らず、無謀にも足を踏み入れた事によって妨害が行われたのだった。
「ん?待てよ、お主はどうしてここまで無傷で進んできておるのじゃ」
それもそのはずだった、魔力を感知することによって、魔物はそこに群がるはずだった。
「いや、普通に歩いただけだが?敵みたいなのも居ないしな」
「おっかしいのぅ.....んなぁ!?なんじゃお主!!魔力がないじゃないか!?」
そう、妖精の言うように、勇士には魔力と言うものがなかったのだ。
「は?そんなもんないだろ普通は」
「普通はあるんじゃ!ばかたれ!」
「はぁ?なんでだよ、魔力って漫画とかの世界の話だろ?魔法使ったりするような?」
「まんが?魔法は人間は皆、使えるんじゃ!基本じゃろう!この世界の常識じゃ!」
「は!?なんだそりゃまじか、そんじゃーこの世界は魔法が使える世界なのか!?それなのに俺は魔力がないのか?終わってるじゃねーか!」
「そうじゃのう、終わっておるの」
絶望だった。この世界では魔法は当たり前の様に扱われており、人間を含めた様々な種族が魔力を持ち、それを扱っている世界なのだ。
故に、勇士はこの世界で唯一、魔力を持たぬ人間として転移したのだった。
しかし、勇士は生粋の負けず嫌いでポジティブな心を持っていた。
「ちっ、それなら鍛えるか....」
「鍛える?そんな事しても無駄じゃろう、魔物に見つかれば喰われるのがオチじゃろ」
「そんなもん、やってみないとわかんねぇーだろ」
妖精は、人間の脆弱さを知っているからこそ、この森の立ち入りを阻止していたのだった。つまり、ここにいる勇士に対しても無論、同じ気持ちを抱き、さらに魔力が無いとなればそうそうに森から追い出すように、しむけるのだった。
「なら、こいつと戦ってみるのじゃなぁ、逃げれるものなら逃げるがいいぞ」
そう言うなり、妖精は目の前で、魔物の狼を召喚したのだった。
「うぉ!すげぇな魔法か!これ!」
魔法を初めて目の当たりにした勇士は、興奮していた。
「そんな事を言っておる余裕はあるのかの?」
すると、狼は勇士に向かって真っ直ぐ突進していった。
妖精は、これに対して人間は恐怖し逃げだすと予想しており、森の外へと追い出すつもりだった。
しかし、勇士はその場であろうことか、ファイティングポーズを取りやり合う格好を見せていたのだった。
「おっしゃぁ!こいっ!いぬっころ!」
勇士は、喧嘩に置いて無敗だったのだ。
故に、逃げるという事を計算に入れておらず、取り敢えず殴ってみると言う暴挙に出たのだった。
飛び掛かる狼と勇士の拳が衝突した。
すると、そこには一撃でのされ気絶した狼が横たわっていた。
「う、嘘じゃろ!?」
妖精は二度見した。
「あ、ありえんじゃろ!?魔物じゃぞ!?狼じゃぞ!!魔狼じゃぞ!?一撃でなんぞ、ありえんじゃろう!?」
驚きを隠せなかった。それもそのはず、元来、魔力を持つものに対しての対処法は魔力でしかなかったのだ。
それは、動物であれ、昆虫であれ、木々であれ、そうであったのだ。
何が起きようともその事実が覆る事はなかった。
しかし、今、目の前でその事実が覆されたのだ。
空前絶後の現象が起こったのだった。
「なんだよ、弱いなこのいぬっころ、腕試しにもなんねぇな」
と、肩を回しながら勇士は言う。
世界の常識を覆したことすら知らずにーー
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