触らぬシスコンDQNに祟り無し? ~アルグリア戦記外伝~【改訂工事の為、長期休止中】

虎口兼近

第1話 【改訂工事前】凶神...転生する

◆アルグリア大陸暦千五百三十八年一月一日 カツンパラデス王国~封印の洞窟




 血の臭いがする。鉄の味がする。ここはどこだ? そして、俺は誰だ? 




 俺は手足を動かそうとするが、ジャラリと鎖で繋がれているような音が聞こえ、手足に嵌められた拘束具の存在を知覚する。




 暗闇の中で目が慣れ始めると、やはり俺の手足は鎖で剥き出しの壁に繋がれていた。俺は己の四肢を拘束する、鎖のかせを見つめる。




 そして、俺の意識は、徐々に覚醒かくせいしていく。




 そうだ! 俺はでゲームスタートしたんだ!




 俺は自分の体を触ろうと手を動かそうにも拘束具で、壁に繋がれた状態では思うように動かせない。




 段々と体中に感覚が戻って来ると節々に激痛が走り、口内はどこか切ってるのだろう。鉄の味が、舌を刺激する。




 俺は覚醒した意識で、自分に問い掛ける。




 俺は確かファンタジー歴史シミュレーションゲーム『アルグリア戦記』の新選択難易度の《ゲーム世界に転生》を始める時に、気付いたんだ。






 選択キャラアバターがと言う事に。






 そこで俺は、好奇心のあまりそのキャラアバターが、どんなキャラアバターなのかと確認する為に選択したのだった。




 そこまでは問題は全く無かった。 




 その行動によって、俺が練りに練った才能スキル構成群と厳選した十個のアイテムが取り消しキャンセル状態に為った。それも問題は無い。




 また、選択すれば良いだけの話だ。




 問題は、何故かそのままの状態(スキルを設定していない、アイテムも持っていない)で、ゲームがスタートされた事だった。




 勿論、俺は押してない。押す必要がないし、気の迷いを起こす質でもない。




 と言う事は、勝手にゲームがスタートしたって事だ。うん、これはクレーム案件だ。 




 だが、運営製作会社に俺はクレームを入れられない状態だった。GMコールもダイブアウトのボタンも存在しない。




 何故なら、俺はゲームの世界に転生したからだった。




 え、中二病かって? ふむ、誰しもそう思うだろうが、残念ながら事実なんだ。




 真面目な話、俺はゲーム世界に転生する気満々でゲームをスタートするつもりだった。




 ところが、何故か自動的にゲームが始まってしまった。




 思うところは勿論あるが、現実として在るがままを、俺は仕方無く受け入れる事にした。








 事の始まりは、俺のゲームの弟子であるプレイヤーネーム【カルマ】が、【アルグリア戦記】の最難関シナリオをクリアして手に入れた特典シナリオ【ゲーム世界に転生】で、ゲームを始めたまま連絡が取れなくなった事だった。




 俺の弟子は、廃人ゲーマーの中の廃人ゲーマー、【廃神オーバーアウト】と呼ばれる人生全てをゲームに捧げたゲーム馬鹿の変態だった。 




 そんな奴が失踪するはずも、そんな無駄な事をするはずもなかった。そんな暇があればゲームをする奴だからだった。





 ゲーム馬鹿の家の室内カメラには誘拐された形跡もなく、【家庭用自動人形】に尋ねても頑として行方が知れなかった。




 只、室内カメラの映像でも、家庭用自動人形の証言でも一貫して、弟子【カルマ】が突然消えた事実があるだけだった。




 俺は思った。これってもしかして、もしかすると、もしかするんじゃないかと。




 俺は思った。弟子だけに楽しませるのは癪だと。




 最高難易度のシナリオは、所謂マゾと言われるへきでないと楽しめない鬼畜なシナリオだった。




 選択出来るキャラアバターは奇しくも弟子のプレイヤーネームと同じ【カルマ】限定の一個体で、能力値である筋力・耐久力・知力・敏捷・器用・魅力が【1】で固定される。




 つまりは個体レベルを上げても一切能力値が成長しないマゾ仕様で、スキル(才能)枠が【0】で固定され、一切スキルを覚える事が出来ない鬼畜仕様。 




 次いでにアイテムの持ち込みも一切出来ない縛り満載の仕様だった。ああ、一代限りで子孫での継続プレイも不可だったな。




 【アルグリア戦記】の最高難易度のシナリオクリアとは、そんなマゾで鬼畜な状態で、【アルグリア大陸】を制覇(47国家とモンスター勢力の統一)する事だった。




 阿呆か、馬鹿か、それとも只の冗談かと言うレベルの難易度のシナリオが【創造伸の試練】だった。




 俺はに則って、鬼畜仕様のシナリオをクリアした。はっきり言って苦痛以外の何物でもなかった。




 弟子【カルマ】にだけ楽しい思いをさせたくないと言う、其れ一点の為だけに俺は苦行を成し遂げたのだった。




 苦行をクリアした特典は、英雄ポイント(アバターの能力・スキルなどをカスタマイズ出来るポイント)を一千億分獲得出来る券が一枚。




 成長身体能力値の限界上限(筋力・耐久力・知力・敏捷・器用・魅力には人種種族ごとに限界上限が設定されている)を取り払う突破券が一枚。




 スキルの最大枠数の十枠を取り払う(無限にスキルを修得出来る)撤廃券が一枚。




 制限(ゲームシステムが承諾するかどうかが基準)はあるが、新しく固有才能ユニークスキルを創造出来る券が一枚。




 そして、お目当ての選択難易度【ゲーム世界に転生】のシナリオ選択券が一枚だった。









 ゲームスタートでつまずき、全てのカスタマイズを取り消しキャンセル状態でスタートした俺は、これからの事を考えていた。




「ちくしょおおおおお~! 俺っていてるぜ~!」




 俺は大声で叫んだ! ああ、安心してくれ、別にストレス発散で叫んだ訳じゃない。




 俺の脳裏に浮かぶに俺以外の生物反応がなかったので、誰もいないと解りつつも、万が一の為に確かめただけだ。




 周辺地図の情報(地図に現在地名が表示される)によると、ここはカツンパラデス王国の地下王墓の更に地下のようだ。




 おまけに、封印の洞窟と言う大層な名前が付いている。




 俺は自分のステータス情報を確認した。




 個体情報【氏名・個体レベル・備考(職業・称号・才能など)】と、状態情報【HP(生命力)・MP(魔力)・MSP(精神力)EP(持久力)FP(満腹度)】・能力情報【筋力・耐久力・知力・敏捷・器用・魅力】・部隊編成情報【統率力・攻撃力・防御力・機動力・持久力・戦法力・士気力・詳細】の四つの項目を、順番に確認すると直ぐに結論は出たのだった。




 俺の身分・職業は共に囚神しゅうじんで、囚神の詳細はとらわれの神と言う説明文だけだ。大雑把な説明分に某かの悪意を俺は感じたが、何を言ったところで、現状が改善する訳でもないと在るがままを受け入れた。




 称号も才能もヤバいのが結構あり、状況・能力・部隊編成情報共に流石、神の一柱だと言う能力だった。




 しかし、もう俺の結論は出ている。




 俺は脳裏に浮かぶ情報表示の職業を強く意識し、職業を変更してしたのだった。




 この両手足を縛る鎖の名称は《神の拘束具》で、詳細は神の権能を全て封印する拘束具だと記述している。




 なら、神をだけだ。




 アルグリア大陸で自由に職業を変更出来るのは、プレイヤーか創造神カリダド教の教皇の二人だけだ。




 弟子が【カルマ】として、このアルグリア戦記タイムパラドックスの世界に生まれれば、三人だが。いやまてよ、並行世界パラレルワールドの方が可能性としては、高いかも知れない。




 まあ、今更だ。俺は転職し、目論み通りに神の拘束具を引き千切った。




 神を辞めると身分は【未設定表示】になり、称号と才能も幾つか消滅したが構わない。




 こんな場所で、時間を無駄にする方が論外だった。




 人種種族も、神精霊人カムイから宝玉精霊人カーバンクルに変更されてる。




 宝玉精霊人カーバンクルか、......最高に危険な種族じゃないか!?




 何が危険だって? アルグリア大陸での宝玉精霊人カーバンクルの評価は、歩く真緋石クリムゾンルビーだ。




 額にでっかい宝玉を埋め込んでる愛玩奴隷あいがんどれい一番の人気者さ、おまけにその心臓は不老長寿の薬の素材で大人気だ。




 くっくくくくく。




 ガ◇ジ・DQNと忌み嫌われた俺が、ここアルグリア大陸では人気者とは、嬉しくて涙が出るぜ。




 こりゃ楽しみで眠れそうにもないな、くっくくくくく。

 







 ある男が、アルグリア大陸に爆誕した。




 男は前世の仮想現実世界では、触らぬDQNに祟り無しと言われ、その残虐性と嗜虐性と殺られたら殺り返すプレイスタイルから、凶神オーバーヒールと呼ばれ忌み嫌われた超極悪人だった。





改訂:▼

【2020/07/18 文章を修正】

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