神様の樹 ~ギンナン泥棒とほら吹き宮司~

小林左右也

1章 ギンナン泥棒とほら吹き宮司

1 焼野原のご神木

 空襲で焼けた落ちた家々が多い中、ぽつんと残った二本の大きな銀杏の樹。

 夫婦銀杏、化け銀杏とも呼ばれている大きな銀杏の樹は、ご神木として神社に祀られているものだった。


 町も、神社も焼けてしまったのに、夫婦銀杏だけはまったくの無傷で。葉の一枚、枝一本も焼け焦げた様子もない。

 焼野原にすっくとそびえ立つ銀杏の樹には、本当に神様が宿っているに違いない。

 でも、なんて身勝手な神様なんだろう。

 自分ばっかり助かって、他は助けてくれないなんて。


 幼心に思った日のことを、今でもはっきりと覚えている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る