死ねる場所を教えてやるよ
鈴木 那須
第1話
朝…いつも通り目覚まし時計が……鳴らなかった。
「うわああああああああああ!!」
現在時刻は8:29分。やばい、このままだと完璧に遅刻だ!
朝食はパンを走りながら食べよう。急いで着替えて、家を出た。
走れ!回れ!俺の足!
普段の1.5倍のスピードで走る。
遅れたくない、恥をかきたくないと言う思いがそうさせてる。
だあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!
赤信号だ。てめえ!止まらせるんじゃねえよ!信号ってのはな、止まってしまった人に"大丈夫だ、お前はまだ進める"って事を示すためにあるんだよ!(違います)
たっくここの信号は存在意義を分かってねえ。
などと考えているあたり、結構心は余裕かもしれない。止められてしまったものは仕方ない。空でも仰いでおこう。
今日は快晴。春らしい日差しだ。春特有の生暖かい風が吹いている。
信号が変わった。よし、スピードアップ。
家から学校まではおよそ1.5km。交差点を渡り、老舗和菓子屋の前を通って橋を渡り、コンビニの角を曲がると学校だ。数字だけ見たら近いように思えるが実際走ってみると案外遠い。
走る間に一応言い訳を考えておく。思い浮かんだ順に番号を振ってみた。
①日曜日だと思ってた
②親が起きるのが遅かった
③事故に巻き込まれた
……だめだ。マシな案が出ない。
もう一度考える。
④人助け
よし、これで行こう。ただ、不安なのは
先生 「なんで遅れた?」
自分 「④です!」
っめ言うことだな。多分無いと思うけど。
老人に道案内してましたって言っておこう。
橋の中央まで来た時、あっちから同じ高校の制服を来たやつが歩いてきた。女子だ。しかも同じクラス。でも、なんで学校とは反対方向に向かってんだ?
俺と彼女は少しずつ近づいて行った。もうすぐそこだ。
「おおおお、おはよ」
何故かどもった。
挨拶が陰キャだぞ俺。
「おはよう、奏君」
といつもより暗い声で挨拶を返したのは、帰山 楓(きやま かえで)。高校で知り合った。
「何してるの?」
「帰る」
「どこか具合が悪いのか?」
「頭」
少し様子が変だ。いつもより機嫌が悪そうだ。
そうか…
「なら、学校へ行こう。勉強したら治るぞ」
「そういうことじゃない。頭痛」
「頭痛くらいだったら保健室行けば良いのに……。さあ、行くぞ、遅れる」
俺は彼女の手を取った。が、振りほどかれた。
「嫌だ。行かない」
声が荒くなっている。どした?高校に親でも殺されたか?
「ほら、行こうぜ」
「嫌、行きたくない」
少し彼女の目に雫が溜まった。余程行きたくないらしい。
「分かった、ならこっち来い」
俺は彼女を学校と反対方向へ引っ張って行った。
死ねる場所を教えてやるよ 鈴木 那須 @kanade0625
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