番外編 ジョゼフィン・レンフィールド様のお茶会

 ジョゼフィン・レンフィールド様主催のお茶会は、レンフィールド公爵家では無く、王宮の奥、王族の方々の住まうテラスで行なわれる。

 テラスの扉を大きく開け放ち、色とりどりの花が咲き乱れるように咲いていて、美しい様になっていた。

 花々のほのかな香りが、時折風に乗ってやってくる。

 それも、今日の紅茶やお茶菓子に合っていた。


「マリー様。ようこそお越しくださいました」

 ジョゼフィン様がにこやかに私を迎え入れてくださる。

 時間を間違えたのかしら……と、思う程に皆様がきちんと席に着いていた。


「本日はお招き頂き、まことにありがとうございます。レンフィールド様」

 私は、作法通り礼を執りお礼を言った。すると、私の側にふぁっとした感じでやってきてスルリと私の腕を抱きしめながら言う。


「まぁ、マリー。ジョゼと呼んで下さらなきゃ嫌よ」

 いや……なんの拷問でしょう。ここは公の場。しかも、今日参加されている方々は、年齢が違えど皆様、公爵家及び侯爵家のご令嬢と奥様たちなのですが……。今まで、私の悪口を散々言っていた方もいらっしゃるわ。

「ジョゼ……様」

「ジョゼ、ですわ」

「……ジョゼ」

 私が思いきって呼び捨てにしたらジョゼは嬉しそうに微笑んだ、その様子に周りは驚いて固まってしまっている。


 ジョゼは他の方々の方を向いたとき、もうニコリともしない顔に戻っていた。

「皆様、今日のお茶会の主賓マリー・ウィンゲート公爵令嬢様ですわ。今回の英雄エドマンド・マクファーレン様のご婚約者でもいらっしゃいますの。そして……」

 また私の腕に抱きつき

「わたくしのお友達ですわ。皆様もそのつもりで、仲良くしてくださいね」

 そう言って、ジョゼ自ら私を自分の横の席に座るよう促し、色々と世話を焼いてくれている。


 本当なら、もっと前……10歳くらいの頃からお遊び的なお茶会に参加をして、デビュタント後にはこういう場になれていなければならない立場なのだけれど、私は田舎に捨て置かれた身。

 一度も、お茶会に参加したことがなかった。

 ジョゼは、多分王妃様やエド様からその辺りを聞いているのだろう。

 私が恥をかかないように、気を遣って下さっている。

 そして、自分の大切な友人だと、公言して守って下さるおつもりなのだと思う。


「わたくしも、僭越せんえつながらジョゼの事をとても大切なお友達だと思いますわ。ジョゼから、ずっと友達だと思って頂けるように努力していきたいと思います」

 お茶会が、お開きになって帰るとき、私が言った言葉にジョゼはそれは嬉しそうに笑って下さった。

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