この勇者共、悪(ワル)か否か!? ー中つ国の四悪勇ー

福山おけい

プロローグ

「ヴヲぉぉぉぉぉア!」


 紫を帯びた月光が差し込む、石造りの厳かな寝室。

豪奢なベッドの上、黒髪の男が一人怒気満ちた咆哮を上げる。

いや、嘆いているといったほうが正しいだろうか。

蹲った彼の傍では、豊満な体つきの金髪裸婦が

口やかましく彼の慟哭を鎮めようとしていた。


 どうしてだ!どうしてだ!


 体をひっくり返し、童の様に手足をじたばたさせながら、更に男は悲嘆する。

なんと情けない姿か。

分かってる。でも納得できないんだよ。


 え、お前誰かって?



「俺だよぉぉぉ!さっきから嘆いている男だよぉ!」



「ちょっと何をいきなり⁉」

 うるせぇと金髪裸婦をはねのける。


 なんだ、「どういう状況?」って顔して。

というか、アンタは誰だ。


 ああ、そうか。


 俺は今、己を笑ってくれる人が欲しいのか。

これまでの俺が辿ってきた日々を、共に振り返ってくれる人が欲しいのか。

アンタはきっとその聴衆なんだろう。

じゃあ一つ、話を聞いてくれ。

長くて、ありがちな三文戯曲。


「ヴァアアア!申し上げます!モウシアゲマス!」


「ちょっと、ホント静かにしてください!――勇者様!!」



“中つ国に混沌訪れし時、勇者立つ。

崇めよ、者共。

彼の者、我ら神族が使わせし御使いなり。“


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