第65話 私と天使(妹)の過去⑨
「こんにちは。お母様とみゆさんはご在宅でしょうか?」
見覚えのある男性が私に尋ねるが、私は問答無用で家の玄関の扉を閉めようとすると、見覚えのある男性は玄関前で勢いよく土下座してお母さんと妹を呼ぶように願ってきた。
「謝る気があるのなら来ないでください。みゆはあなたのせいで傷ついたんです。もう二度あの子の前にあなたが現れない。それが、あの子のためって分かりませんか?今、何であなたはここにいるんですか?謝ったと言う事実と、あわよくば和解したと言う事実作りがしたいだけでしょう?そんなあなたの自己満足であの子をさらに傷つけないでください」
イラついた私はそう言い残して玄関の扉を閉めて家中の鍵をきちんと閉める。
あの顔は、もう二度見たくなかった。孤立していた生徒を使い妹を陥れようとした教師なんて、私は見たくなかった。私の妹は欠点なんてないくらい優秀だ。それが気に食わなかった。それに加えて、妹の容姿が好みだったから…ふざけている。あの日、私が止めに入っていなかったら、妹はあいつに何をされていたことか…人を疑うことを知らなかった妹にとっては信頼できるいい教師だった人が悪魔に変貌した。せっかく仲良くなった友達には裏切られたように感じて、あれ以来、妹を心配して家を訪ねてくれるクラスメイトすら信じられなくなっている。
イーニアちゃんは何も知らなかった。自分が利用されていることも知らなかった。妹を傷つけるきっかけを作ってしまった罪悪感から、イーニアちゃんも学校に行けなくなっているみたいだ。それなのに、イーニアちゃんは毎日、泣きながら家に謝りに来る。イーニアちゃんは本音で謝っている。それは私にはよくわかる。でも、妹はそれすら信じられない。
妹をこんな風にした元凶が、こうしてノコノコと出歩いていることが私には許せなかった。私は妹の部屋に戻り眠っていた妹の頭を撫でる。
そして、私の部屋に向かい、私の部屋の机の引き出しを開ける。中には、いっぱい手紙が入っていた。あの日から、毎日、イーニアちゃんが置いて行った手紙や妹のクラスメイトからの手紙、これを、妹に渡すべきか、私にはわからなかった。
妹は、私以外とは家族でも話せない。私以外の人を見れば怖がり出す。そんな状態だからカウンセリングにも行けない。どうして、妹がこんな目に遭わなければならないのだろうか…私にはわからない。
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