第66話 私と天使(妹)の過去⑩
「お姉ちゃん…泣いてるの?」
私の部屋でずっと泣いていると部屋の入り口から妹が私に声をかけてくる。私は慌てて涙を拭い笑顔を向ける。
「大丈夫、泣いてないよ。最近さ、みゆの部屋にずっといたから私の部屋埃っぽくて…ハウスダストやばいねぇ…」
「嘘…お姉ちゃんの嘘つき…」
妹は泣きながらそう言って自分の部屋に走り閉じこもった。しばらくは、扉の前に何か置いていたのか、扉を開けることすらできなかった。私はずっと、妹の部屋の前で妹に声をかけ続けた。
「嘘つきなお姉ちゃんなんかしらない。もう信じられない。だから1人にして、明日からはちゃんと学校行って…」
ドア越しで聞く妹の声は涙声だった。でも、何て言えばいいのだろう。怒ってはいない感じだった。寂しい。と言う気持ちはあるのだろうけど、きっと妹は、私を学校に行かせようとしてくれた。今では、そう思う。
でも、私は翌日も学校に行かずにずっと妹の部屋の前にいた。妹が限界を迎え、お手洗いに行くために部屋から出た瞬間、妹と目が合う。
「何でいるの?」
「私はみゆのお姉ちゃんだから」
私がそう答えると妹は泣きながら私に抱きついた。私は妹を抱きしめる。
きっと、妹も今のままではよくない。と思っていたのだろう。真面目で頭のいい子だから…妹は、その日お母さんにカウンセリングに通いたいと言い、お母さんはそれを了承、そして翌日から私は学校に復帰した。
今、思うとあの日の選択は正しかったと思う。姉として、私があそこにいなければ、妹はきっと最後の一歩を踏み出せていなかったのではないかと思う。
その日から妹は少しずつ、私から離れていった。その分、一緒にいる時は前よりも甘えるようになった。そんな妹を私は可愛がり妹は可愛がられることを喜んだ。そうしていたらいつのまにかシスコンと呼ばれるようになっていた。でも、仕方ない。こんなに可愛くて愛おしい天使を好きにならないわけがない。
少しずつ、妹が外に出るようになった。まずは、部屋からリビングへ、リビングから、お散歩へ、お散歩からカウンセリングへ、それでもやはり、男性と関わるのは怖いみたいで、女性としか関わらなかった。
そんな妹が、私のために、過去の恐怖を乗り越えてくれたことは、姉として、とても嬉しい出来事だった。
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