第53話 私と先輩たち




「っ…」


こう先輩を見て、私が逃げたくなった。私は立ち上がりこう先輩が入ってきたドアに向かう。こう先輩に謝るって決めてたのに……私は弱虫で……情けない。


「みゆちゃんから伝言、お姉ちゃん逃げたらだめだよ。だってさ」


こう先輩の横を通った時にこう先輩が優しい声で私に言う。私の天使は私の行動なんてなんでもお見通しで私を逃して甘やかしてはくれないらしい。


「伝言は伝えた。その上で出て行きたいならどうぞ…僕は止めないよ。今は話せないならまた後日でもいい。ただ、ゆめ先輩がさっき言ったみたいに、僕もゆめ先輩も、もう…逃げないから」

「ごめんなさい…」

「謝らないで、とりあえず座ろうか」

「はい……」


私はこう先輩に背中を押されて先程、私が座っていた席に座りこう先輩は私の側に椅子を持ってきて座る。


「とりあえずこう君、みことちゃんに言いたいこと言いなよ」

「………その前に、ゆめ先輩の返事を聞かせてください」


なんのことかわからなかった。ゆめ先輩とこう先輩は何を言っているのだろう。と疑問に思った。話についていけていない。


「わかった。私の気持ちは変わらない。こう君を好きになることはないし、こう君とみことちゃんはお似合いだと思うよ」


ゆめ先輩の言葉を聞いてますます状況がわからなくなる。なんなのこれ?


「みことちゃん、まずはごめんね。みことちゃんから告白されたことを勝手にゆめ先輩に話して…」

「え、あ、いや…あの時、勝手に告白して勝手に逃げてこう先輩に心配かけた私が悪いから気にしないでください」


こう先輩は誠心誠意と言った様子で私に頭を下げてくれる。


「もう一つ、みことちゃんに謝らないといけないことがある。みことちゃんに告白した後、僕は…ゆめ先輩に告白した。その返事が、さっきのゆめ先輩の言葉…」

「え……」


もう、私の頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。もうダメだ。なんかもう、いろいろと取り返しがつかないことになっている。


もう、このパートはダメかもしれない。ここまで拗れさせたのは私…争っていたはずなのにトドメを刺したのが私なんて笑えない。本気で私はそう思って、諦めてしまいそうになっていた。








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