第22話 私と天使(妹)と勉強






食事会が終わり帰宅後、天使(妹)はテーブルの前で真剣な表情をして手を動かしている。


「お姉ちゃん、今、英語の勉強してるんだけど終わったら数学やるから数学教えて」

「うん。いいよ。英語も教えてあげようか?」

「えー、英語はお姉ちゃんに教えてもらうとわけわかんないことになるから自分でやるよ」


妹は笑いながら言う。私は英語がめちゃくちゃ苦手だ。たぶん中3の妹の方が英語できると思う。妹は不登校だが、勉強はめちゃくちゃできる。不登校になる前、中学校に入学してすぐに英検の準二級に合格している。妹は教えなくても教科書みたりするだけで自然と身についているタイプの天才だ。実際、学校のテストは保健室で受けているのだが、妹は学年1位の成績を普通に取る。だが、そんな妹が唯一教えてもらわないとできない科目があった。それが、数学だ。基本的に私が教えれば普通にできるようになるので苦手科目とは言えないが、妹が唯一自分一人では全くわからないと言う科目だ。


それにしても…不登校なのにちゃんと規則正しい生活をして、勉強や中学校から送られてくる課題をきちんとこなす妹はすごいな…と思う。本来なら、妹は普通に優等生で受験も行きたい高校を好きに選べるレベルだっただろう…そう考えると今の妹の状況はとてももったいないと思うが…


「お姉ちゃん、英語の課題終わったから数学教えて」

「あ、うん。いいよ」


妹に呼ばれた私は妹の横に座る。妹は綺麗な文字で英文が書かれたプリントを片付けていた。自由論文式の課題みたいだが、パッと見た感じ中学生のレベルで書ける文章ではない….と私は感じた。


妹は数Bと書かれた教科書を開く。数Bは高校の科目だが、私は驚かない。妹曰く、みゆ、数学苦手だからずっと先の勉強して今の問題が簡単に感じるようにすればいい点数取れるの。だそうだ。


まあ、高校の問題が解ければ中学の問題は解けるような気はするが…なんか頭いいのに馬鹿みたいなこと考えてるな…と私は思う。ちなみに妹はすでに高校1年生までの範囲なら数学は完璧と言ってもいいレベルだ。ぶっちゃけ凄すぎて怖い……


私が妹に教えると妹はわけわかんないよ。と言うが、数分後には普通に解けるようになってる学習能力の高さは本当にすごいと思う。


「もったいない…」

「え…」


つい、口に出てしまった言葉を聞いて妹は驚くように反応する。


「あ、ごめん。なんでもないよ」


私が笑顔で言うと妹はそっか…と言い再び問題に没頭する。


「みゆはさ、高校とかどうしたいか決めてるの?」


私は妹に聞いた。ずっと聞いてこなかったことだが、そろそろ聞いておかないといけない。そういう時期だと思ったから…妹に取って大切な一年を悲惨な一年にしたくないから…







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