第114話説得と
「貴様はぁ!」
オリックスが怒り狂っているが、今回必要なのはこいつではない。正直、1人でもできる。が、セリエが五月蝿い。マーリンさえいれば、後はなんとかなるはず。俺は小声で内容をマーリンに伝えた。
「ごめんなさい、私とオリックスはできないの。ごめんなさい」
「いや、母さん。ごめんね、ノア達は自由に出入りできる様にしておく。寂しくはないよ。だから、内戦が終わるまでは大人しくしていてくれ。セリエ、行こうか」
セリエの手を引きながら、独房を後にした。
バレタニアの商店街に移動して、珈琲を飲んでいると、カフェオレを飲むセリエが不意に聞いてきた。
「ねぇ、あれで良かったの?」
「あぁ、中の下位には良かったな。権力の固持に重点をおく汚物貴族。そいつはあの二人さえ動かせなくできるんだ。あのまま連れていっても、寝返るだけだ」
「そんな、、、って汚物貴族?!」
「セリエ、君が王位を継いだら犯罪者達から金を搾り取ろうか。それで、結構な金額が手に入る。王国のこの広大な領地に貴族は領地込みと領地無しを含め430家程。敵はそのうちの400家。師団兵力で言ったら23師団あるうちの18師団が敵。一個師団は約2万の兵力だから36万。でもそのうちの第13師団は壊滅。だから今は約34万。何とかなるって」
まぁ、貴族の私兵の事は計算外だから敵は大体50万程がある計算かな。
「それって、師団兵力だけでしょ!私兵や傭兵も含めたら50万、そこにソルジャーの大半が参加してるのよ!」
あら、痛いところ付かれた。50万だけなら、誉めたのだけれど、ソルジャーの危険性まで理解しているとは。
「もっと言えば、組織の機械兵器も参加しているね。まぁ、組織自体が参加しているかは謎だけど」
「やぁ、ディスタ。体はどうだい?」
セリエは口をパクパクとさせている。笑える事には笑えるけど、話した内容があれだしな。
「組織は、、、この際止めよう。彼処は何を考えているか、全く不明なのだから」
「そうだね。バロ、一体どんな作戦をするんだい?正直、だいたい予想は付くけど」
「セリエ、俺は今回師団を率いたい。バレットに話をつけておいてくれないか?」
「師団を率いるって、あんたねぇ。良いわ。だけど、明日まで待ってね。これからフォレスタからのお客様がおみえになるのだから」
そうだ、工場都市を制圧したからフォレスタとの交易が復帰したんだった。まぁ、フォレスタからの使者はカーヴィー師以外にあり得ないから、安心はしているが。
「バロ、いま笑ってたよ。余程嬉しいんだね」
「ディスタ、止してくれよ。俺は、、、いや、嬉しいんだ。カーヴィー師は、やっぱり僕の憧れであり、刀の師匠だから」
セリエとディスタは珍しい物を見たといった表情をしている。でも、自覚はある。こうして本心をさらけ出すのは久し振りだよ。
「ディスタさん!もぅ、時間ですよ!」
「お?」「へぇ」
ディスタは顔を赤らめ、声の主は僕たちを見て硬直している。
「ディスタ、デートの途中だったのか。ごめん、悪いことをしたね。セリエ、行こうか」
「そうね、行きましょうか」
顔が赤い二人に席を譲り渡し、バレットの邸宅に僕らは向かった。
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