第108話死闘弐
「ふっ」
ガン!
「何!」
俺は驚いた。いくら厄災だと言えど、まだ子供の体だ。ノア並みの体格を持っていないこいつに大剣が扱えるはずがない。
「どうした?」
「(ギリッ)」
俺は、歯軋りしかできなかった。
オリックスは俺をただ睨んでいる。恐らく、俺が大剣を扱える事に驚いているのだろう。
、、、馬鹿だな。見た目(皮)は人間だが中身は龍神だぞ?人間の大剣など軽いものだ。
「ほら」
カチッ
ゴォン!
「クガァ!何が、、、有り得ん。振るえたとしても、これ程の衝撃なぞ」
「ふぅ、、、種明かししてやろう。この大剣はブーステッドソードと呼ばれるものでな。レン技術准将の試作品の1つだ。持ち手にトリガーがあるだろ、これを引くと」
「アタックガード!」
「マーリン!」
「一瞬だが、加速するんだ。しかも空気圧縮の原理だから魔力はいらない。どうだ?」
「どけろぉ!」
マーリンのアタックガードをもう少しで破れる所で、ローリングして回避するが背中をオリックスに斬られかけた。迂闊だったな、これは俺のミスだ。
「斬る直前で最大限の回避を行ったか。忌々しい」
「いやぁ、この程度で助かった。逆にこの程度しか傷つけられないんだよな、最強のソルジャー様は」
正直言うと、傷付いた事に驚いた。完璧に回避したと思ったし、浅い傷だから自然に治るが、失った血がすぐに戻る訳ではない。血を失いすぎれば、俺は出血死するだろう。腹に穴が空いたときに結構流れ出た。不味いな、催涙ガスに、魔力切れ間近、大量出血。勝てる要素なくないか?
「まぁ、マーリンは貰うけど」
「なに!」
「、、、」
「マーリン!マーリン!!!」
俺にはダガーがある。魔力を込めれば何でも斬れる最高の切れ味と耐久性を誇るエレメントダガーとドラゴンダガー。今回はエレメントダガーの方を魔力を流してマーリンの胸にローリングしたさいに投げつけた。
「オリックス、どうした?来いよ。俺を殺したいのだろう?マーリンを見捨てて俺を殺せよ。だが、エレメントダガーをその時は引き抜く。心臓付近だから血が通ってるんじゃないかな?」
「お前は、母親を殺すのか!」
「子供を殺そうとして、何言ってんだ?殺される覚悟が無いのに、出てくるな。未熟者」
「うぉあ!」
大剣をただオリックスは振り続ける。俺が弾き、斬り返しても、恐れる事なく、緩むことなく、俺を殺そうとしてくる。そして、鍔迫り合いが起こった。
「馬鹿だな」
「何を!」
「俺は助ける時間を与えたのに、自分で不意にした。未熟者、それで最強のソルジャーだと?技術は上でも、心構えがなってないな。昔とは大違いだ」
「何がわかる!」
「わかるさ、自分の不甲斐なさで俺は娘と妻を殺されたのだからな。そして、俺は貴様に殺されかけた。あの時、いやいい。安らかに眠れ」
ガン!
激しい踏み込みと、ブースターを使い大剣ドラゴンキラーを弾く。
「終わりだ」
「!」
「オリックス!」
「馬鹿な!」
馬鹿な、動けるはずがない。心臓付近にダガーが刺さっているんだ。力の調節はしたから、治療すれば治る傷だというのに。動けば、死ぬぞ。いや、止まらんな。、、、違う、止めるんだ。
「ガイアコントロール」
地面を陥没させ、マーリンを地面に落とす。そして、マーリンが退ければ当たるのはオリックスだ。
「ウォォォォォォォォォォ」
「五月蝿い!」
ドラゴンキラーを横にし、オリックスはブーステッドソードの刃を受けた。
「ドラゴンキラーに罅が、、、」
「やりやがったな。マーリン、、、オリックス、妻に感謝するんだな。貴様の、、勝ちだ」
俺は、ブーステッドソードを地面に落とし、立つこともできない無様な姿を晒した。
「マーリン、これは」
「リフレクション。与えられた衝撃を倍にして相手に返す魔法よ。バロはブースターの加速と自分の本気の力を乗せて貴方を攻撃した。そして、、」
「腕も、足も、骨がバラバラに砕けているな。マーリン、恐ろしい女だ。俺が殺さないと、仮定したか?それとも?」
「私を仕留めなかった時にね、バロ。ごめんなさい、、、オリックス。ごめんなさい」
肉体の再生は行われているが、バラバラの骨を治すのに一体どれだけかかるか。治る前に、殺されるな。
「オリックス、さぁ首を取れよ。大罪人。だがな、セリエを頼むぞ。彼女は、真なる王位継承者なのだから」
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