第76話泣き止んで

「聞こえなくなりましたね」


「そうね、バロが戻って来るわ。入り口の封鎖を解きなさい」


「「yes my princes」」


私の指示1つで直ぐに動いてくれる鉄騎隊。正直、バレタニアじゃなくて私直属にしたいわね。う~ん、叔父様に聞いてみようかしら。


「セリエ、止めなさい。鉄騎隊が欲しいのなら、同じものをつくれば良いでしょう。練度の関係でまったく同じとは行きませんが、もしかしたら鉄騎隊よりも素晴らしい部隊が作れるかもしれませんよ」


「バロ、無理ね。王都の女騎士なんて使えないわ。安全な王都の騎士は礼式と治安維持が目的だから。近衛から引き抜こうにもね?」


「ふん、まぁ良いですよ。それよりも、尋問の成果は?」


「虚偽を言っている様子は無いわ。それはサリィの御墨付き」


「すみません、サリィとは誰でしょう?」


正直、これは吹き出しそうだ。今まで一緒にいて本名を知らなかったのね。


「管理人殿、私がサリィだ。以後、お見知りおき願おう」


「副長殿でしたか、申し訳ありません」


「いや、私が名乗っていなかった点もある。これから改めて宜しく頼む、管理人殿」


「わかりました、副長殿」


握手するのは良いけど、管理人殿呼びと副長殿呼びは変わらないのね。何だか拍子抜けよ。


「まっ、それよりもバロに話しますか」


私は彼等が話した事の顛末をこと細かく伝えた。泣いてからか、目元が赤い以外普段のバロだ。此方のほうが良いわ。うん。


「そうか、ならアドベンチャーギルドをあたる必要があるな。ノア、エレナ、ヘレン、3名にソルジャーとして命令する。此度の真犯人確保又は情報収集を行う。そのサポートをしろ」


バロがソルジャーの命令権限を使うのは初めてかしら?もしかしたら私が知らない所で有るかも。


「いや、俺は、、、」


「私は行く。兄さんに殺されたくないもの」


「ザコルマは馬鹿だね。今のお兄ちゃんは安定してる。もし、怒り狂ったあの状態なら私達全員死んでる」


「いや、、、でも」


「ノア、悪かった。俺の命より大事な人が第4棟にいてな。ついカッとなってしまった。そうだ、例え大事な人が病院のベッドで意識不明の重態でいても、俺がお前達を責めるのは筋違いだ。本当にすまない。だからそこにいて良い。俺の大事な人の命が消えるとしても、俺はお前達を憎むことはしないだろう」


ランバースの弟妹達は基本的に良い人なのよね。ヘレンちゃんは違うけど、ノア君とエレナちゃんは顔が真っ青。バロが大事な人を連呼したからね。しょうがないわ。


(ねぇ、バロ大事な人って誰?)


(ヤエさんです。僕にとって姉のような人の一人が意識不明で生死の境をさ迷っている。何も出来ないのが辛いのです)


何故だろう、凄くほっとしている。少なくとも、話している大事な人にはバロは恋愛感情を〈まだ〉抱いていない。


「兄貴、俺はノア・ランバースは指揮下に入る。宜しく頼む」


「私、エレナ・ランバースはソルジャーバロ・ランバースの指揮下に入ります」


「ん?了解」


ヘレンちゃんは怠そうね。でも、ここでバロの機嫌を損ねたら今度こそ消されるもの。


「良かった。セリエ達にばれないよう消す必要は無いですね。それでは行きましょうか、こんな事をしでかしたド腐れ野郎を血祭りにあげる為にな」


あ、、、これは死人が出るわ。

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