第70話目覚めても

「あ、、ぐっ!ここは?」


パリン


何かが割れる音が聞こえる。俺がそちらを向くと、看護師が俺をまじまじと見ていた。


「わりぃ、誰か呼べるかい?」


「はい!先輩!先輩!206号室の患者さんが、目を覚ましました!」


「ナイアちゃん、病院では静かに。」


「ごめんなさい。」


「はぁ、」


騒ぎ声を無視し、なぜここに居るのかを確認する。俺は確か厄災と戦闘して、、、


「バ、、ごぶっゲホッゲホッ。」


「ほら、落ち着いて下さい、桶です。血はここに吐き出して下さいね。」


「すみません。」


俺の吐血で、回りは赤く染まっている。血を吐き出し終えた俺は、改めて目の前の女性看護師に状況説明を頼んだ。


「、、、貴方はこの2日間、危ない状態でした。マキウスとアンゼリアちゃんが貴方を連れてきたときは、誰もが助からない。そう思っていましたから。」


「シュウ!」


「あだだだだ!馬鹿!いきなり抱き付く奴があるかよ!」


「それだけ騒げるんだ。問題はないな、でなければ助けた意味がない。」


「ディーダ、ジーク。お前達か。」


「ふん、シュウ。お前のお仲間も下にいる、後で呼んできてやろう。」


「はぁ、相変わらずだな。」


同期の奴等とこうして会えることに、少し安らぎを覚えて、、、


「そうだ、バロは!彼奴、俺の馬鹿弟子は!」


「、、、騒ぐなよ。」


「おっ、バロ!お前、、、その姿は!」


「ざまぁ、無いだろ?厄災なんて相手に。」


バロは右目を覆うような包帯に欠落した左腕。どう見たって俺より重傷だ。


「彼はジークが見つけたの。ボロボロで腕を何かに噛み千切られていた。目は、、、」


「木の枝がぶっ刺さってたらしい。でも、不思議と不便は無いんだよ。左腕だってそうだ、当分ソルジャーとして活動不可能。まぁ、明日には退院するけどな。」


「駄目ですよ、貴方は手術に成功したは良いものの、左目の視力は」


「でも体力は回復しています。体調も万全、金は払って有りますし出ていっても、この病院に不都合がありますか?それともこのまま、金蔓として入院させ詐欺紛いの口実でよりむしりとろうと?」


「いえ、私はただ」


流石に見かねた俺は助け船を出すことにした。


「バロ、お前その怪我でどうする気だ。」


「バレタニアに戻る、此方での活動は結果はどうであれ成功した。セリエ、マリン、副長殿と結果をカール市長に伝えて終わりだ。」


バロはそんな身体でも、ここから出ていくと言っていた。


「それに、、、本職である管理人業務をおろそかにしている。これでは今月の給料がかなり差し引かれる可能性がある。それは避けなくては。」


全員が「え?」っと言った表情をしている。現実に戻って声を出したのは女性看護師だ。


「仕事ですか?その歳で?」


「おかしいですか?王国で成人は15歳。これでも一端の社会人ですよ?」


「えっ?お前、ソルジャーは?」


「ソルジャーなんて副業です。たまに依頼を受ける位ですので。」


結局数時間話してしまったし、生きてた事は嬉しい。でも、このふてぶてしさ腹が立つのは当たり前だろうな。

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