第67話対ゾル=マキウス戦

龍我天成の疲労か、それとも灰の聖女から受けたダメージの影響か、どちらにしろ俺が今ふらついていることに変わりない。


「ディスタが入れば、もう少し楽なんだがな。」


ディスタ・マクレイン。どうやらゾル=マデウス。あの時の巨人の片割れを倒したらしい。まさか2体もいるなんて。でも、今はどうでも良い。巨人、ゾル=マデウスも組織の物だ。そして、組織の指導者が3人も来ていた。つまり、、、


「やっぱり有ったな。」


諸悪の根元がソコにいた。ゾル=マデウスの様に武器は持っていないが、良くわからないゴツゴツした見た目をしている。背中には煙突のような物があり、そこからは霧のような物が永遠とで続けていた。


「ぶっ壊す。」


ふらつく肉体に渇を入れ、ドラゴンダガーとエレメントダガーを構え、魔力を流す。


「疾!」


風と氷の魔法を纏い加速する。


「オォォォォォン!」


「叫ぶなよ、五月蝿いじゃないか。くらえ、俺のダガーを」


地面を凍らせ、その上を滑る。氷は俺の得意魔法であり、俺のフィールだ。


「オォォォォォン!」


巨人がもう一度叫ぶと、俺の周りのここまでよりも激しい濃霧が立ち込めた。


「ふん、霧で隠れたつもりか?影で丸和かりだ!」


目の前の巨人の影に向かいドラゴンダガーを投げる。魔力の流れている今なら巨人の装甲くらい簡単に貫けるだろう。


「ん?」


魔力を流した物は魔力を切らない限りある程度感覚を共有できる。まあ感覚と言っても手応えを感じるぐらいだけど、それはまったくない。


「戻れ。」


ドラゴンダガーに右手に戻るよう命令する。

両手に構え影に向かう。


「何?」


あり得ない。影の場所には何もなかった。

でも、俺の視界の先には影がある。


「ぐぅ!ゴブッ!」


ドゴン!


脇腹から巨大な腕に殴られる。吹き飛ばされた俺は地面を抉りながら滑っていく。滑り終えた俺を待っていたのは頭から流れ出る大量の血だった。


「グゥゥァア!あぁ!」


もうスピードで滑ったせいで石か何かが頭にめり込んでいた。普通は死んでいるだろうが、俺は何故かめり込んでいない場所を掴み、引きずり出した。でも、意外と血が出ていない。それどころか完全に塞がってさえいる。でも、俺は止まらなかった。俺を傷付けたコイツにただ、怒りが沸いていた。


「龍我天成。」


その時だ、今まで感じた事の無い激しい力が暴れ出た。押さえれなかった。押さえたくなかった。まるで全てをさらけ出したような、そんなある種の幸悦感さえもある。


「ぐぁぁぁぁぁGAAAAAA!!!」


俺はこの時、獣に成り下がった。














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