第65話バロ対アイリーン

俺と灰の聖女は一歩も動かず、ただ睨みあっている。いや、違う。少なくとも僕は動けない。灰の聖女はにこやかな笑みを浮かべながらただ僕を見ている。


「灰の聖女、行きます。」


「ほぉ、貴方にも騎士道と言うものがある。対峙して感じますよ、少年。」


刀で灰の聖女のランスをいなし、一太刀を浴びせる。しかし、浴びせた一太刀は灰の聖女のガントレットによって受け止めれた。違うな、刀身が掴まれていたんだ。


「私のランスをいなし、一撃を与えるとは。これ程の使い手とは、以外ですね。」


「灰の聖女、僕は今自分に限りなく無力感を感じていますよ。今の一撃、止めよう物なら腕さえ落ちると言うのに。」


そう、今のいなしはただいなしただけじゃない。


「九重一刀流の技と言う事ですか?」


「技ではなく型ですがね。水の型は攻防一体の型。ここまで言えば先程の意味がわかるでしょう?」


「えぇ、ほぼ無に近い力でランスをいなし切り上げる一撃に力を込める。自身の力だけでなく、数多の力が同時に発動している刀身は通常鎧さえも切り裂くでしょう。しかし、それには貴方自身の力が足りていない。」


淡々と、そして的確に一撃を分析していた。

そして教え子に指導するように問題点を提起してきた。解ってはいたけど、、、


「貴方はなぜ笑っているのですか?」


「いえ、まるで先生と話しているようで。

さて、、、ではここからは戦闘スタイルを変えさせて頂きます。」


俺は灰の聖女にそう言うと、刀を地面に突き刺しダガーを抜いた。


「雰囲気が変わりましたね、貴方の本気と言う訳ですか?」


「、、、あまり話している時間がないんでな。本気で潰す、龍我天成。」


肉体に龍鱗、背中には翼が現れる。4回目でより力が出ている様にも感じる。


「ハァァァァ、、、シャァァ!」


「これは、これ程の力が!」


殺せ、切り刻め、喰らえ。体の奥底から目の前の女を殺せと叫びが聞こえる。


「ディメンション。」


灰の聖女が何かを唱えた。一瞬、俺の周りがブラックアウトした様にも感じたが、今はそんな気配はない。


「ふん!」


「ぐぅぁあぉん!」


あり得ない力でランスの凪ぎ払いをくらい体が弾き飛ばさせる。空中で受け身も取れず、近くにあった岩に突っ込んだ。


「殺す、、、倒す。」


砕けた岩が体を起こすと同時にパラパラと地面に落ちる。


「教えてあげましょう、貴方は弱い。刀を持っていた時よりも。」


「ダガーは貴方に確かに向いています。しかし、剣の道をただの殺しの道具と思っているような子供に負けるほど落ちぶれてはいません。」


「よあい?オエガ?よあいあと?」


呂律が回らない、でも関係無い。今は、どんな手を使ってでも倒す。


「らぁ!」


かくし球であるチェーンを灰の聖女の両腕に巻き付ける。


「くっ、所持者の自由に動くチェーン?こんな物もあるとは。しかし、両腕が使えないのは同じ。」


「グルァ!」


聖女は逆にチェーンを持ち俺の動きを封じてきた。


「ふっ、やはり弱い。殺しはしません、眠りなさい。」


「いいや、俺の勝ちだ。」


呂律が回らない龍我天成じゃあ魔法は使えない。でも、とっくに龍我天成は解いている。


「サンダークラッッッシュ!!!」


「キャァァァァァァァァァァ!」


雷撃が俺自身に当たる。しかし、灰の聖女もダメージを負っている。


「くっ、、、まさかこんな手を。くぅ、、、、良いでしょう。今は引いてあげましょう。、、、少年、次は剣士として合間見える事を望みます。」


「次は勝たせて頂きます。」


灰の聖女と俺はチェーンで繋がっている。これを利用した。彼女程の腕なら魔法を避けるのも楽だろうしかし、電気伝導はどうしようもない。鉄は電気をよく通す自分もダメージをくらう諸刃の剣だ。


「ちっ、痺れてやがるし全身大火傷。さっさと元凶倒しますか。」


他のグループは戦いの最中のようだ。俺は一足早くターゲットに近づいた。

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