英雄の息子が英雄とは限らない!

shadow

第1話旅立ち

太陽が上り、朝が来る。

何時もこの窓からあの山から上る太陽を見てきた。それも今日で見納めともなると、感慨深いものがある。


ドッタッドッタ!


廊下を誰かが走って来る。


バン!


と勢いよく扉を開き、がたいの良い肉だるまが入ってきた。


「兄貴!そろそろ時間だ、彼奴らも下にいる。兄貴も早く来てくれ。」


肉だるま、名前はノア。俺の弟だ、俺?俺は肉だるまじゃない、いたって普通の体格だ。まぁ、細マッチョって感じだ。


部屋を出る前に旅支度の再確認だ。忘れ物なんて洒落にならない。


「兄貴。」


「兄さん。」


「お兄ちゃん。」


それぞれ、弟のノア。長女のエレナ、次女のヘレン。俺達は四ツ子だ、似てないのは親父が肉だるまなせいだろう。ノアはもろ親父だし、エレナもエレナで女性としては筋肉が多く、かなりさばさばした性格だ。

母さん似なのは俺とヘレンだろうな。


「さてお前達、この家を出る前に父さんと母さんから最後の誕生日プレゼントだ。」


、、、俺達の旅立ちの日。それは15歳になる日、今日だ。15歳になると成人扱いされる。そして、思い出が詰まったこの家から出ていく日でもあった。


「ノア、お前には大剣を。これは俺がソルジャーだったころ手にいれた大剣だ。名前はベルセルク。こいつは人を選ぶらしい。ノアどうだ?」


「!、、、ぐっ!、、、多分認められた。」


「そうか、ノアお前はその大剣の主だ。」


「親父、ありがとう。」


「エレナ、お前にはこの魔法剣を。王都でもこいつに匹敵する物を造れるのはいない程の逸品だ、名はグラムという。」


「父さん、感謝する。」


「それじゃあ、次は私ね。バロ、貴方は二刀流よね?剣よりも短剣が良いと思ってママ奮発しちゃったわ。前にパパと一緒に戦った厄災の鱗を砕いて刃に組み込んで別の龍の血で精練した短剣と、精霊による祝福を受けた短剣。その名もドラゴンダガーとエレメントダガーよ!ねぇ、格好いいでしょ!素体は全てアダマンタイトだから壊れる心配もないし、魔力を流せばどんな物も切断できる。それに、戻れって念じるだけで直ぐに手元に戻るのよ。ねぇ、バロ!どう!」


母さんはこういうのが無ければ美人なのに、本当に残念だ。でも、短剣は素直に嬉しい。


「ありがとう、母さん。」


「んー!パパの若い頃と違うイケメン!最高よ!さて、ヘレン、貴方は魔法と棒術が得意よね?アダマンタイトを主軸としてミスリルでコーティングして、魔力伝導率を底上げし更に!精霊王をぶん殴っ、、、お話して手にいれた精霊王作の精霊石を魔法媒体とした私の最高傑作!その名も、エレメンタリーロッド。嬉しい、嬉しいわよね!」


「ママ、ありがとう!」


ヘレンはさっきの長い説明を全て聞いていたのだろうな。この子はそういう子だしな。


「、、、それじゃあ、あなた達を転移させるわよ。完全ランダムだからもしかしたら四人一緒かもしれないし、バラバラかもしれない。でも安心して、必ず街に転移はするから!」


時間が来た。

母さんの魔法陣が俺達を包み込む。

俺達四人はお互いに別れを言った。

そして、最後に


「「「「行ってきます。」」」」


言い終えると、俺は光に包まれた。

しかし、何故か俺だけ赤い光だった。

、、、これが面倒事の始まりだとはこの頃の俺はまだ知らない。





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