続・銀河鉄道の夜
永坂 友樹
カムパネルラの家①
カムパネルラが死んだあの日から何もかもが変わってしまった。
僕は学校で本当の一人になってしまった様な感じを覚えているし、ザネリも僕に嫌味なんかは言ってこない。
それどころか大人しくなってしまっている。
やっぱり負い目を感じてしまっているのだろうか。
「ジョバンニさん。この星の名前はですか?」
先生の問いかけに僕は思わず勢いよく立ち上がってしまう。
カムパネルラが亡くなってから、僕は誤魔化すように仕事にのめり込んだ。
そのせいで以前よりも授業に集中できていない。
お父さんが帰ってきてからはもう働いていないが、不眠症みたいに眠れない夜が続いている。
「ではジョバンニさん。この星座は何ですか?」
先生が質問を変えた。
それでも僕はすぐに答えることができなかった。
今指されているのがはくちょう座であることはわかっている。
でも白鳥の停車場や鳥捕りのことが思い出されてなんとも言えない気持ちになる。
教室が静まり返った。
以前ならザネリのくすくす笑う声が聞こえたり、カムパネルラが代わりに答えてくれるのだが、カムパネルラはもういない。
「はく…はくちょう座です。一等星はデネブです」
どうしようもなくなった僕はなんとか答えを言った。
「そうですね。素晴らしいですよジョバンニさん。もう座って大丈夫です」
先生が満足そうに頷いている。
僕はなぜか気が抜けてしまって、椅子に崩れるようにして座り込んでしまった。
もしかしたらこんな気持ちになっているのは僕だけなのかもしれない。
ザネリは負い目を感じているのかもしれないという理由がある。
でも僕は?
僕はどうなんだろう。
皆はいつも通り動いている中で、僕だけが取り残されている。
このままじゃ色々浮かばれないな。
お父さんやお母さんにも心配をかけてしまっている手前、早く立ち直らなければという気持ちだけが先行してしまっている。
どこかでケジメをつけなければなと思いつつも、尾を引きずってしまう。
「カムパネルラさんのことがあって出せていませんでしたが、銀河のお祭り(ケンタウル祭)の感想文を提出してもらいます。皆さん前に集めてください」
先生に促され、皆紙を取り出して前に回してくる。
「ジョバンニ。ほら」
ぼうとしていた僕に後ろの席の人が声を掛けてきた。
「ごめん。ありがとう」
自分のものを重ねて、前に送る。
「提出した人から帰っていいですよ。明日も学校ですから。皆さん遅刻しないように」
先生がそういうと皆、席を立って教室を出ていった。
カンパネルラがいなくなってからもう一週間が経つ。
博士からはあの翌日にと誘われたが、なんだかんだで引き伸ばしてしまっていた。
そして今日がカンパネルラの家に行く日だ。
もう何年ぶりだろうか。
しばらく行っていない気がする。
そうして僕はいつもより早足になって家に帰った。
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週一更新の予定です。
余裕があれば週二で上げるかもしれません。
よかったら応援コメントや星をお願いします。
よろしくお願いします。
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