ウソつきは金持ちのはじまり
えなかえっぱえ
プロローグ
願ったものとまるで違うものが眠気まなこに映ったとき、絶対的な信頼を置いていたサンタクロースという赤服じーさんが俺を裏切ったことを知ったのは小学生の頃だった。
一年間よい子に努めてやっとの思いで手に入れたそれが求めていた据え置きのゲーム機よりも価格の安い携帯ゲーム機であることを確認し、俺はサンタがただの伝説であることを確信した。
渋々そのゲーム機で遊ぶ俺の表情を察して浮かばれない顔をする両親の表情を、更に俺が察していることを両親は知る由もなかっただろう。
おそらく全国の欲深き子供たちへプレゼントを配るべく空を駆けているであろう赤いそいつに見えるようにと、チラシの裏に書いたお手製の手紙を二階の窓に貼り付けてクリスマスイヴの夜を心待ちにしていた俺は、裏切られたその日より大人と同じ土俵に立ったのだ。
二の舞にならぬよう、良心的な価格でかつ自分の欲が満足するものを何も知らない無垢な少年を装ってサンタクロースを通して両親へねだった。
サンタ伝説を
時を経て、両親からサンタのネタばらしをされた中学生の頃に『嘘も方便』ということわざを教壇の上の大人に教えてもらったことで過去のサンタに関する両親と自分の行動に
実際問題、嘘は常に生活と共にある。
遅刻の言い訳、テストの解答、修学旅行の男ばかりのピロートークでの好きな女子暴露大会など、自らを守るためにつく嘘は絶えることはなかった。嘘をつく頻度が高くなるに連れて俺の良心とやらが幼き頃に感じた痛みへの抵抗力が強くなっていったのは言うまでもない。
高校へ進学し、選挙権を得るまであと2年と少しとなった俺は自分の後ろの席に曜日毎に髪型を変えたり中学の頃に校庭にミステリーサークルを描いたといった逸話を持った美少女が現れることを密かに期待したが、人工甘味料ほども甘くもない俺の人生には訪れることもなかった。
訪れたのは、人災だった。
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