第377話 次に向けて
誕生日を迎えて、19歳になっても、これといった変化は感じられない。みんながお祝いしてくれて幸せな誕生日だった。と思うくらいで、特別、何かが変わったわけではない。19歳の誕生日は大体、そんな感じで終わると思う。
変化があるとすれば、来年…そして、もう少しでその変化を迎えるのは……
「そういえば、まゆちゃんももうすぐ誕生日だよね?」
遅刻して大学で講義を受けた後、まゆとバイトに行ってお店の裏でバイトの準備をしていると店長がまゆに声をかけた。
「まゆちゃんももうすぐお酒飲める歳かぁ…酔ってりょうちゃんに迷惑かけないようにね」
「あはは。そんなことしませんよ」
………トラウマが蘇る。まゆ、お酒めっちゃ弱いんだよなぁ。まゆと誕生日に2人きりになる約束をしたのはいいけど…お酒飲むとか言わないよね。ちょっと心配
「りょうちゃん、まゆちゃん、お疲れ様。あ、りょうちゃん、その腕時計めっちゃ似合ってるね」
「えへへ。ありがとうございます。みはね先輩も選ぶの手伝ってくれたんですよね」
「うん!まゆちゃんが悩んでたから、腕時計とかいいんじゃない?ってアドバイスしてあげた。プレゼント選んでる時のまゆちゃん本当にかわいかったんだよ。もうね。りょうちゃんへの愛が強すぎるからかめっちゃ空回りしちゃって…」
「みーちゃん、余計なこと言わない」
めっちゃ気になる…後でみはね先輩にこそっと教えてもらおうかな。って考えてたらまゆにめっちゃ睨まれたからやめておきます。まゆちゃん、怖いよぅ。
「あー、今日も疲れた」
「お疲れ様」
バイトが終わっていつもみたいに手を繋いで駐車場まで歩く。まゆとお揃いの腕時計をつけて、まゆと手を繋いで歩くことがすごく幸せで…まゆも、僕と同じように幸せを感じていたからか、ちょっとだけ、遠回りをして駐車場までの道を歩いた。
「まゆ、まゆが誕生日の日は何がしたい?」
「えー、りょうちゃんと一緒にいたい」
まゆの誕生日の日はまゆと1日一緒にいて、デートをする約束をしている。そんなこと言わなくても、ずっと一緒にいる。僕が聞きたいのは、誕生日にまゆがどんな思い出を作りたいか、だった。せっかくの20歳の誕生日なんだから…今までで1番特別な日にしてほしい。
「何がしたいのか教えてよ」
「うーん。まずね。0時よりも前に寝て、朝、起きたら隣にりょうちゃんがいて、まゆが起きたら1番最初にいつもみたいにおはよう。って言って欲しい。そのあとに誕生日おめでとう。って聞かせて欲しいかな。それで、朝はゆっくり喫茶店でモーニングして、お昼ごはんはいつもみたいにアパートでりょうちゃんと一緒にお昼ごはん作って一緒に食べたい。そのあとにさ…ちょっとだけデートして夜はアパートでりょうちゃんといつもみたいに過ごしたい」
「もっと、思い出に残るようなことしなくていいの?」
「うん。まゆはりょうちゃんが一緒にいてくれれば幸せだから、それしか望まないよ。だから、まゆの側にいて…」
嬉しいなぁ。まゆにこんな風に言ってもらって…ただ、やっぱり、20歳の誕生日、まゆと付き合って初めてのまゆの誕生日、特別な日にしたい。
「まゆ、誕生日当日の予定は僕が考えていい?」
「うん。お任せします。まゆはりょうちゃんの側にいられれば幸せだから、誕生日当日はずっと、まゆを幸せでいさせてください」
「もちろんだよ」
まゆが、本当に、僕の側にいてよかった。と思ってくれるくらい、精一杯、まゆの誕生日をお祝いしてあげようと改めて思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます