第371話 誕生日ケーキ





「やばい…お腹いっぱい…」

「りょうちゃん、この後、誕生日ケーキあるからちゃんと食べてね」

「はーい」


みんなが用意してくれた料理が美味しすぎてあっという間に夕食を食べ終え、お腹いっぱいになっていた僕に春香がちょっと不安そうな表情で言う。大丈夫。デザートは別腹です。


「りょうちゃん、プレゼントとお誕生日ケーキとまゆと春香ちゃんとゆいちゃん、どれから楽しみたい?」

「……………」


謎すぎる5択…最初のプレゼントとケーキは分かるよ。その後のまゆと春香とゆいちゃんって言う選択肢は何!?まゆの隣で顔を真っ赤にしてる春香となんかそわそわしてるゆいちゃんを見るとまゆが真面目に聞いている気がしてやばい…


「えっと…ケーキがいい」


どう答えるのが正解かわからなかったので、とりあえず無難な解答をしてみる。


「まゆと春香ちゃんとゆいちゃんはケーキより下なんだ……」


悲しそうな表情で言うまゆを見て慌ててそんなことないよ。と言うが、まゆも春香もゆいちゃんも頬を膨らませて不満オーラ全開の表情をしている。


「えっと、ほら、楽しみは最後にとっておきたいタイプだからさ…」

「じゃあ、今日は寝かせないから…」


春香……何を言っているの?まゆもゆいちゃんもちょっと顔赤くしながらえへへ。とか言ってるし、なんか、やばい。まあ、いつものことだけど……


「じゃあ、楽しみは最後にしておいて…ケーキ、食べようか。りょうちゃん…誕生日ケーキ…私が作ったんだけど…不出来だったらごめんね……」

「春香が作ってくれるケーキはいつも世界一美味しいよ。すごく楽しみ」

「えへへ。ありがとう。そう言ってもらえるとすごく嬉しい」


冗談抜きで春香の作ってくれるケーキは美味しい。今日は何ケーキだろう。ショートケーキかな?チョコレートケーキかな?チーズケーキかな?どれが来ても幸せだわ。


「え?…ま、まじか……」


春香とまゆとゆいちゃんがケーキを取りにキッチンに行って戻ってくると、春香はショートケーキ、まゆはチョコレートケーキ、ゆいちゃんはチーズケーキを持ってきた。しかも、普通にどれも誕生日ケーキくらいの大きさのケーキだ。


「えっと…ごめんなさい。作りすぎちゃった…りょうちゃん、いつも、どれ作っても美味しい。って言って食べてくれるから、どれがいいのか分からなくて全部作っちゃった…」


驚いた僕を見て春香は申し訳なさそうに言う。


「こんなに作っても…食べられないよね。ごめんなさい…りょうちゃんの誕生日だからって気合い入れすぎちゃって……」

「は、春香、謝らないで。春香の気持ちはめっちゃ嬉しいよ。ありがとう。大丈夫。全部食べるよ。春香が一生懸命作ってくれたんだから。本当にありがとう。今から食べるのが楽しみ」


そう言って、泣きそうになっていた春香が持っていたケーキを預かってテーブルに置いて、ありがとう。と言いながら春香をぎゅっと抱きしめる。まゆとゆいちゃんもテーブルにケーキを置いて、こっちに来たので3人まとめて抱きしめてあげる。


「まゆとゆいちゃんも、いっぱい準備してくれてありがとう。めっちゃ嬉しかったよ」

「えへへ。りょうちゃんに喜んでもらえてよかった」

「頑張った甲斐があるよ」


まゆとゆいちゃんは嬉しそうにそう返事をしてくれた。年に一度の誕生日、去年、いつもみたいに春香が直接お祝いをしてくれなかった分だろうか…今年は、今までで一番、幸せな誕生日のような気がする。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る