第336話 いて…





ずっと側にいられればいい。


数日間、ずっと、あなたに抱きしめられていて、本当に幸せで、いつまでもこの時間が続けばいい。と思った。あなたに抱きしめられて、私だけを見てくれている。それだけで、すごく幸せだった。


2人には悪いけど…3人を幸せにするって言ってくれたりょうちゃんにはもっと申し訳ないけど…もう。ずっと、このまま幸せでいたい。この幸せ以外は望まないから…許して欲しい。だから…


ずっと、私の側にいて…お願い。



会いたい。


何度も何度もそう思った。毎日、絶対、朝起きたら電話して、寝る前も電話したのに、出てくれなかった。毎日、様子を見にアパートまで来たけど、結局会えなくて、まゆは毎日悲しかった。悲しくて寂しくて、あなたの面影を求めて、バイトもないのにバイト先の本屋さんに行ったり、ホールに行ったりしてあなたの面影を探してた。


会いたいよ。もう、離れないでよ。ずっと、まゆの側にいてよ。まゆは、あなたの側にいられればそれでいい。それ以外は何も望まない。だから、まゆの側にいてよ。


ずっと、まゆの側にいて…お願い。




会いたい。


最近ずっと、会えないことが辛い。会いたい。会いたいよ。私、ずっと泣いてるんだよ。寂しくて、会いたくて、ずっと、泣いてるんだよ。私が泣いてたら…背後から優しく抱きしめて私を慰めてよ。


早く、会いたい。大好きなあなたに会いたい。あなたの側にいたい。そのためなら、私は…最低な人間になってもいい。大切な2人からあなたを奪い去ってでも、私はあなたの側にいたい。やっと掴んだ幸せを、絶対に離したくないし、離して欲しくない。だから…


ずっと、私の側にいて…お願い。



3つの感情を受け入れることがどれだけ難しいかを今、体感している。


春香と2人きりになってから数日、我慢の限界と言うようにまゆが来て、アパートの部屋のインターホンを鳴らしている。そして、早く会いたい。と催促するようにゆいちゃんからスマホの通知や電話が鳴り止まない。


「…………」


まゆとゆいちゃんを放ってはおけない。でも、春香は僕を離してくれない。ずっと、ギュッと抱きしめて、行かないで。と言うようだった。


今、春香から離れたら…まゆを出迎えたら…ゆいちゃんに優しく声をかけたら…春香がどこかに行ってしまいそうで怖い。でも、まゆとゆいちゃんも放ってはおけない。


春香と、まゆと、ゆいちゃんが、自分を選んで。と言っているみたいだった。


3人全員がそれを望むのなら、選ぶべきなのだろうか。春香とまゆとゆいちゃん、その中で誰が一番大切で、誰が一番大好きで、誰の側に一番いたいのか、誰に一番側にいて欲しいのか、誰を一番幸せにしてあげられるのか、誰に一番幸せにしてもらえるのか、今、ここで決めないといけないのだろうか……


「嫌だ…」


ちょっとだけ、誰か一人を選んだ時のことを考えたよ。春香を選んでも、まゆを選んでも、ゆいちゃんを選んでも、僕は幸せだろう。でも、僕にとって一番の幸せは…やっぱり、3人が幸せになって、3人の笑顔を一番近い場所で見て、僕も笑顔になること…だから。


僕は春香とまゆとゆいちゃんに側にいて欲しい。ずっと昔から大好きで、いつも僕を支えてくれていた僕にとってかけがえのない存在である春香と、初めて僕に好き。と言ってくれて僕をいつも助けてくれたまゆと、ずっと好きって諦めないで好きを貫き通してくれたゆいちゃん、全員を幸せにしたい。離したくない。離れてほしくない。誰か一人なんて絶対に選べない。だから…


すごく、わがままだけど、春香、まゆ、ゆいちゃん、お願い。ずっと、僕の側にいて……







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る