第137話 王様ゲーム①





「王様ゲームやろー」


温泉から出てきた4人と合流して6人で部屋に戻ってると、部屋の中にはすでに布団が6枚敷かれていて布団の上でゴロゴロしたり部屋の端に移動させられていたソファーに座ってのんびりしているとりっちゃんさんが鞄の中から割り箸を取り出して言う。用意がいいな……


りっちゃんさんの提案に割とみんな乗り気で王様ゲームをすることになってしまった。女性5人に男性1人で王様ゲームって…なんか居心地悪いな……



「じゃあ、みんな1つずつ箸を持ってね。王様の箸には⭐︎マークがついてるから引いた人は他の人への命令を考えること。じゃあ、いっせーので、で引くよ」


りっちゃんさんの掛け声に合わせてみんなで一斉に箸をりっちゃんさんの手から引いた。りっちゃんさんはあまりものの箸を自分のものにするみたいだ。あまりものには福がある。それを証明するように最初の王様はりっちゃんさんに決まった。


「私が王様だね。じゃあ……2番の人は4番の人のことをどう思っているのか発表してもらおうかな」


りっちゃんさんの言葉を聞きドキドキしながら自分の箸を見る。自分の箸は4……2は……


「私…2番」


春香が2と書かれた箸を見せながら呟く。それに応えるように僕は4と書かれた箸をみんなに見せた。


「え、りょうちゃん……」


僕が4番としると春香は顔を真っ赤にしながら慌てふためく。かわいい。


「ほら、春香ちゃん、はやくはやく」

「あ…うぅ…恥ずかしい……なぁ……」


りっちゃんさんが催促すると春香は勘弁してください。とアピールするように涙目でりっちゃんさんに言う。めちゃくちゃかわいい。


「はいはい。いいから、はよ」

「うぅ…りょうちゃんのこと……好き。めちゃくちゃ好き大好き。これでいい?」


りっちゃんさんに催促されて、春香は顔を真っ赤にしながら下を向いて小声でめちゃくちゃ早口で言う。めちゃくちゃかわいいやん。


「あ、えっと…僕も春香のこと大好きだよ」


僕がそう言うと春香は布団をかぶって隠れた。めちゃくちゃかわいい。


りっちゃんさんがかわいいなぁ。と言いながらみんなの箸を回収して再びくじ引きが始まる。春香は布団の中からひょこっと手を伸ばして箸を掴んだ。




りっちゃんさんの掛け声で再びみんな箸を引いた。

今回の王様はまゆ先輩に決まった。お願いだから、変な命令しないでね……


「じゃあ〜3番の人はまゆに告白してもらおうかなぁ」


ぶっ込んできやがった。絶対僕を狙っての命令だと思うが生憎僕は1番だ。まゆ先輩に告白するのは……


「私じゃん……」


りっちゃんさんが3と書かれた箸を見せるとまゆ先輩は少しだけ残念そうな表情で僕を見る。かわいいなぁ。


「えっと、私が男設定?」

「うん」


りっちゃんさんが男役でまゆ先輩に告白するみたいだ。普段クールな感じでかっこいいイメージが部活で定着しているりっちゃんさんが男役で告白するシチュエーションはすごく楽しみだ。


「まゆ…」


りっちゃんさんはまゆ先輩の名前を呼びながらまゆ先輩を布団の上に押し倒してまゆ先輩の頭の横に手を置く。壁ドンを地面でやっているような感じで見ていてすごくドキドキする。まゆ先輩なんか顔赤くなってるし…


「好きだよ。付き合おう」


シンプル度直球な告白だった。だが、見ていた僕たちはすごくドキドキしていて、まゆ先輩なんか顔を真っ赤にしてえ、え、え…と慌てふためいている。かわいい。


「りっちゃん先輩かっこよすぎ…」

「イケメン……」


ゆいちゃんとさきちゃんがりっちゃんさんを見てキャーキャー言いながら呟く。


「りょうちゃんも、見習って…」


春香はそわそわしながら僕に言う。いや、あの告白の仕方を僕がやってもかっこよくならないから…あれは、りっちゃんさんがやるからかっこいいんだよ。僕にあれを求めないで。


「めっちゃ緊張した」

「まゆも…めっちゃドキドキした……」


まゆ先輩がドキドキしていたのは見ればわかったが、りっちゃんさんは緊張しているように見えなかったぞ……




「じゃあ、次いこうか」


再びみんな箸を引く。次の王様はさきちゃんだ。何を命令するのだろう…読めないなぁ……


「えっと…じゃあ、5番の人と3番の人がハグするとか…」


5番は僕だった。3番は誰だろう。まゆ先輩か春香じゃなくとやばい気がする……


「あ、私3番だ」


ゆいちゃん……一番困る展開になってしまった。だが、どうしようもないので僕は5番の箸を見せる。僕が5番の箸を見せると春香とまゆ先輩がジト目で僕を見た気がした。後で2人も抱きしめてあげないとな……


そう思いながら僕はゆいちゃんと向き合う。ゆいちゃんの顔が赤くなっていてその…かわいい。普通にかわいい。僕はゆいちゃんを抱きしめる。その際、やむを得ないことだが、ゆいちゃんのでかい胸が僕に触れる。その瞬間、まゆ先輩が小さく舌打ちした気がした。胸が小さいのをやはり気にしているみたいだ。別にまゆ先輩はあれでいいのに…ていうか、今のまゆ先輩が一番だと思う。と考えながら数秒ゆいちゃんを抱きしめて離れようとするがゆいちゃんが離してくれなかった。


十秒…数十秒…一分…とゆいちゃんと抱きしめあっていると時間が経つにつれて春香とまゆ先輩から殺気が放たれているような気がした。最終的にはまゆ先輩がわざとらしくごほん。ごほん。と咳払いをするとゆいちゃんは僕にごめんね。と言ってから離れてくれた。


案の定、春香とまゆ先輩に睨まれたので後でね。と言うように口だけを動かすと2人は睨むのをやめてくれた。


疲れる……





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