第111話 特別な想い。





「おはよう…」


朝、アラームが鳴るよりも早くに目を覚ました私は私を抱きしめながら幸せそうな表情で眠っている大好きな女の子の耳元で囁いた。朝の準備をするために、起こさないようにそっと彼女の腕から抜け出して起き上がりベッドが置いてあるリビングを出て廊下の扉を開ける。そしてお風呂場にある洗面台の鏡で軽く寝癖を整えてから顔を洗い、廊下にある台所に立ち朝食の支度を始める。


「あ、春香ちゃん、おはよう。朝ごはんすぐできるから待っててね…」


春香ちゃんが起きて廊下に出てきたので、私は味噌汁を作りながら春香ちゃんに挨拶すると、春香ちゃんは私に抱きついてきた。何これ、かわいい。


「ちょっ…春香ちゃん?危ないから…ね」

「りっちゃんのばか…朝起きてりっちゃんがいなかったから寂しかったの……りっちゃんがどこか行っちゃったんじゃないかなって……」


春香ちゃんは眠たそうにあくびをしながら私に抱きついて寂しそうな表情で私に言った。


何この子かわいすぎる……あぁ……りょうちゃんはこれにやられたのね。こりゃあ仕方ないわ…うん。まじでかわいい。やば…抱きしめたいわ。


「大丈夫。もう春香ちゃんから離れようとしたりしないから安心して…ほら、早く顔洗ってきな…髪の毛跳ねてるからちゃんと直しなよ」

「うん。ありがとう…」


春香ちゃんは満面の笑みで私に答えて扉を開けてお風呂場の洗面台に向かって行った。少しすると顔を洗い先程よりもかわいくなった春香ちゃんが台所に戻ってきて何か手伝うことある?と聞いてくれた。特に手伝ってもらうことはなかったので部屋の中で待ってて、と言うが、春香ちゃんは嫌。と即答して私の横に立ちずっと私の服の袖を掴んでいた。かわいすぎかよ。でも…ちょっとだけ…邪魔……とは口が裂けても言えない……めちゃくちゃかわいくて癒されるけどちょっとだけタチが悪いわ……


朝食が完成して部屋の小さな机に運ぶ。朝食はご飯に味噌汁、漬物に出し巻き卵、ベーコン、キャベツと割と多めのような気がしたが、春香ちゃんは美味しい。美味しい。と何度も美味しい。と言いながら食べてくれるので作った甲斐がある。料理が上手な春香ちゃんに作った料理を美味しい。と言ってもらえるとかなり料理に自信が持てる。


あっという間に朝食を食べ終えてしまい、後片付けは私がするね。と春香ちゃんが言ってくれたので、後片付けは春香ちゃんに任せて私は着替えと軽くお化粧をする。お化粧と言っても私はあまり濃く化粧はしない。本当に軽くするくらいでほぼほぼスッピンだ。春香ちゃんやまゆちゃんは本当にお化粧をしないので、朝の準備が早いのだが、私は少しのお化粧でも不器用なので時間がかかってしまう。実際に、食器の片付けを終えた春香ちゃんが着替え終わるのと私が出かける準備を終える時間は同じくらいだった。


「まだ時間あるからもう少しゆっくりしたーい」


春香ちゃんはそう言いながらクッションの上で座っていた私の膝の上に頭を乗せて横になる。甘えん坊さんめ……かわいいなぁ……


「りょうちゃんが来てから春香ちゃん、ちょっとだけお姉さんっぽくなったかなぁ…と思ってたのに全然変わってなかったみたいだね…」


春香ちゃんの頭を撫でてあげるとえへへ。と嬉しそうに春香ちゃんは笑う。


「りょうちゃんの前じゃ…恥ずかしいからできないの…」

「はいはい。そうですか…甘えん坊さんめ…」

「じゃあ、もう甘えん坊さん卒業する」

「だーめ。ずっと甘えん坊さんでいてくれていいんだよ。りょうちゃんが来てからさ…春香ちゃんと2人きりでいる機会減ってこういうやり取りできなかったからちょっと寂しかったんだ…」

「そうなんだ。ごめんね…じゃあ、2人きりの時は思いっきり甘えてあげる。だから、甘やかして…」

「悪い方には甘やかさないからね…」


そう言いながら私は春香ちゃんの頭を撫でる。嬉しそうな表情をしてくれる春香ちゃんは本当にかわいい。こうやって私に甘えてくる春香ちゃんは本当に愛おしい。最初は…去年の6月くらいはなんとなく、妹がいたらこんな感じなのかな…と思っていたが…去年の8月くらいに……妹みたいだな…とかじゃなくて…特別な感情なんだと気づいた……きっと……私がりょうちゃんを好きになってしまったのは……この気持ちも一つの要因だろう。


りょうちゃんと付き合いたい。と言う気持ちとりょうちゃんと春香ちゃん、まゆちゃん、3人の輪に私も入りたい……春香ちゃんとも結ばれたい……と思っていたのかもしれない。だから、私は……この子から離れようとした。この子と一緒にいることはできない。と勝手に決めつけた。この子の気持ちも考えないで……私のこの気持ちはどうすればいいのだろう……愛おしい。


この気持ちは口が裂けても言えないなぁ……たぶん。この子は……私のことをそういう目で見ていないから……


「どうしたの?りっちゃん?」

「なんでもないよ。あ、そろそろ出ないと遅刻しちゃうね。行こう」

「うん。そうだね」


私と春香ちゃんは立ち上がり、鞄を持って部屋を出て大学に向かう。今日…ちゃんと謝らないとな…まゆちゃんに……そして、迷惑をかけたりょうちゃんにも謝って……向き合わないとな……





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る