第92話 昔のような遊び





どうしてこうなったのだろう……


現在、僕と春香は僕たちが下宿しているアパートを追い出された。まゆ先輩とりっちゃんさんが春香の誕生日会の料理を作ってる間、料理で戦力外の僕に与えられた任務は春香を連れて料理が完成するまでの時間稼ぎだ。授業が終わってまゆ先輩の車に乗り4人でアパートに帰ってすぐにりっちゃんさんに追い出された。僕と春香をりっちゃんさんが追い出す際にまゆ先輩が春香のことを羨ましそうな表情で見ていたので今度まゆ先輩とも2人で何かしてあげないとな…と考えながら僕と春香は手を繋いで散歩していた。


とりあえず、まゆ先輩とりっちゃんさんからの指令である、料理ができるまで春香を楽しませること。を遂行しなければならない。どうしよう…田舎すぎてやることがない…カフェに行こうかなと思ったが、今から夕食なのにカフェに行くのはなんか違うな…と思うし、カラオケとかも時間的に微妙だ。ほんとうにどうしよう…


「春香、どこか行きたいところとかある?」

「うーん。りょうちゃんと一緒ならどこでもいいよ」


嬉しいことを言ってくれるな…幸せそうな表情でそう即答されて嬉しいのだが…やはり困る。どうしよう…


「このまましばらくお話ししながら散歩しよ。それだけで私は十分楽しめるから…お願い」

「わかった。ありがとう」


僕がどうすればいいのか困っていることを察した春香がこの後どうしたいのかを言ってくれたので本当に助かった。それからしばらく、僕と春香は2人でお喋りをしながら楽しく散歩した。





「りっちゃん…ちょっとだけでいいから目を瞑ってて…」

「まゆちゃん、それは流石にダメだよ…」


りっちゃんがりょうちゃんと春香ちゃんを部屋から追い出した直後、まゆはりょうちゃんの部屋の扉に手を当ててりっちゃんに目を瞑るようにお願いしたがりっちゃんはまゆの腕を掴んでまゆが今からしようとしてたことを止めた。


「だって気になるじゃん!りょうちゃんのお部屋チェックしたいじゃん!何回か入ったことはあるけどさ、細かいところまでチェックできてないの!その…りょうちゃんが夜にどういう趣味とか把握しておきたいじゃん……」


まゆが恥ずかしがりながらりっちゃんに言うとりっちゃんは大きく溜め息をついた。


「あのさ…今時、本とかで持ってる可能性は低いと思うよ。そういうのって男の子は隠したがるものじゃない?だからスマホで見るのが安全だと思ってりょうちゃんはそういう本とか持ってない気がする…」

「う…たしかに…でも…もしあったらって考えると気になって仕方ないの。だからお願い。りっちゃん、少しだけ目を瞑ってて」

「ダメ。そんなことりょうちゃんにバレたら嫌われちゃうかもよ?」

「え、それは嫌だ」


まゆが即答するとりっちゃんはかわいいなぁ。と言いながら笑ってきた。


「ほら、時間ないし早く料理作ろう。早く料理作ったらりょうちゃんと一緒にいられる時間増えるんだよ。だから頑張って美味しい料理を早く作ろう」

「たしかに!うん。まゆ頑張る!!」


まゆの返事を聞いてりっちゃんはかわいすぎる。と悶え始めてなんか恥ずかしかった。


「じゃあ、早く台所に行こう」

「うん」


りょうちゃんの部屋のチェックをしないことにはちょっと悔いが残るがりょうちゃんの部屋のチェックよりもまゆはりょうちゃんと一緒にいられる時間を取った。そうだ。今日は料理が出来た後はりょうちゃんと春香ちゃん、りっちゃんと4人で楽しい時間を過ごせるのだ。と思うと早く料理を作って楽しい時間を早く迎えたいと思えた。




「ねえ、りょうちゃん、公園行っていい?」

「うん。いいよ」

「やった」


春香と手を繋いで散歩をしていると公園の横を通りかかり、春香が公園に寄りたいと言うので公園に寄ることにした。


「ねえ、りょうちゃん。ブランコ押して」

「えー、なんか恥ずかしいな…」

「いいじゃん。昔みたいにさ…」

「わかったよ」


春香がブランコに腰掛けてちょっと勢いをつけてブランコを動かし始めたので僕は春香を後ろから押してあげる。春香の背中を押して、ブランコに更に勢いをつけているとブランコはかなり高いところまで行くようになった。春香は楽しそうな表情をしている。そんな春香を見て僕は昔を思い出した。昔はよく、こうやって春香と一緒にブランコで遊んだなぁ…と懐かしく思いながら春香の背中を押していた。ただ、一つ気がかりなことが春香の今日の服装…膝上までの長いスカートとはいえスカートでブランコに乗るのはどうなのだろうか…まあ、春香が楽しいならいいけど…幸い公園には僕と春香しかいないし…


「はぁ…楽しかった。ねえ、次は砂場遊びしよう」

「え、流石に恥ずかしいって…」

「いいじゃん。人いないしさ…昔に戻ったみたいで楽しいよ」


春香はそう言い砂場に向かった。春香に昔に戻ったみたいで楽しい。と言ってもらえて僕は嬉しかった。昔のことちゃんと覚えててくれたんだな…と思うと本当に嬉しい。そして僕も懐かしい気持ちになりたくて砂場に向かったのだが…昔とは砂場遊びのレベルが違った…そういえば春香は保育系の学部だった…砂場遊びの質が違う…何これどうやって作ったの?というくらい綺麗にまん丸でちょっと艶がある泥団子を見て僕はびっくりした。こんな綺麗な泥団子初めてみたぞ……春香すごい……まゆ先輩もできるのかな?と思いながら春香の技術に恐れを抱いていた。その後も砂場遊びで春香にめちゃくちゃ驚かされた。


あまりに僕の知っている砂遊びと違う次元の物だったので熱中してあっという間に時間が過ぎてしまった。まゆ先輩から帰ってきていいよ。と電話が来たので砂場遊びを中断して、水道で汚れを落としてから僕と春香は手を繋いでアパートまで戻るのだった。




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