第81話 面接の時間





「さて、じゃあ、面接始めようか…まゆちゃんはどっちサイドにいたい?私の方か彼の方か」

「まゆは表で仕事してきたいです」


まゆ先輩は笑顔で答えると店長さんは笑いながら、私一人で面接って言うのもあれだしまゆちゃんいた方が彼もリラックスできるんじゃない?と言われて渋々面接に参加することになった。何この状況……

面接に参加することになったまゆ先輩は店長さんが座る椅子の横に椅子を持ってきて僕と向かい合う形で座った。


「えっと、まずは履歴書を拝見させてもらっていいかな?」

「はい」


僕は鞄から透明のクリアファイルに入っている履歴書を取り出してクリアファイルごと店長さんに渡した。


「まあ、まゆちゃんから話は聞いてるからぶっちゃけ履歴書見なくても大体のことはわかるんだけどね…あ、一応連絡先の把握のためにコピーさせてもらっていいかな?まあ、ほとんどないとは思うけどもし不採用って形になってしまったら履歴書のコピーはきちんとシュレッダーにかけるので」

「はい。大丈夫です」


僕の返事を聞いた店長さんは横にいたまゆ先輩に履歴書のコピーをお願いした。まゆ先輩は僕の履歴書を受け取り、少し席を外して履歴書のコピーに向かった。


「じゃあ、今のうちに簡単なアンケートに答えてもらっていいかな?」


僕は店長さんからアンケートを受け取り、アンケートに回答する。アンケートに回答しながら店長さんと軽く世間話をした。僕がアンケートに答え終わるのと同じくらいのタイミングでまゆ先輩が、席に戻ってきた。まゆ先輩はコピーした履歴書と履歴書を店長さんに渡した。そして店長さんはまゆ先輩から受け取った履歴書を僕に返してくれたので、僕は履歴書を受け取り鞄にしまう。


そして、本格的に面接が始まったが、緊張していた僕からすればめちゃくちゃ緩い面接だった。面接前にまゆ先輩が、大学生のバイトの面接は面接してくれる人と世間話をしに行く。って考えた方がいいよ。と言ってくれていたがその通りだったようだ。

好きな本のジャンルや、大学や部活の話に、趣味である楽器の話、シフトに入れる日などの話をした後にシフトの決定方法や時給などの話があり、面接も終わろうとしていた。


「じゃあ、まゆちゃん、まゆちゃんの彼に対する評価を教えてもらっていいかな?」

「え、まゆが言うんですか?」

「うん」


まゆ先輩は少しだけ黙って考えた後に口を開いた。


「まゆは…その…りょうちゃんと出会ってあまり時間が経ってないけど…りょうちゃんのこといっぱいいっぱい知ってます。だから…今日のやり取りでりょうちゃんのことを評価することはできないので…今までりょうちゃんと関わってきたこと全てを総合しての評価しかできないです。りょうちゃんは…ちょっと大人しい子ですね。控えめで大人しくて気配りができて、控えめな性格だけどいつも笑顔で明るい子です。あと…すごく優しいです。ちょっと度胸がなかったり頼りないなって思うこともありますけど…でも、いざって言う時は本当に頼りになってくれて…なんで言えばいいんだろ……ごめんなさい。上手く言葉はまとまらないけど、りょうちゃんはすごくいい子で、まゆはりょうちゃんと一緒に仕事したいって思ってます。だから、りょうちゃんを紹介しました」


聞いていてちょっと照れくさかったが嬉しかった。言い終えたまゆ先輩は恥ずかしそうな表情をして僕と目を合わせてくれなかった。


「なるほどね。ありがとう。じゃあ、まゆちゃんは退席していただいて結構です」

「え、まゆだけですか?」

「うん。表で仕事に戻って」


まゆ先輩は店長さんにそう言われてどうせなら最後までいたかったと店長さんに目で訴えながら失礼します。と退席して表に出ていった。


「ごめんね。まゆちゃんが人を紹介してくれると思わなかったからちょっとからかってしまったよ…」

「あ、やっぱりわざとこの状況作ってましたか…」

「うん。採用担当がしている仕事ってまゆちゃんの代わりにレジ打ちだから」


店長さんは笑いながら言うがいろいろな意味で大丈夫なのか……


「あ、先に伝えとくけど、採用ね。まゆちゃんが入ってくれる曜日、本当に人足りないからめっちゃ助かるよ。君の指導担当はまゆちゃんにしてもらうようにするから…えっと、最初のシフト日は……再来週の月曜日からとかはどうかな?まゆちゃんもシフト入ってくれるはずだし」

「はい。大丈夫です」

「じゃあ、その日で決まりね。その日以降のシフトは…まゆちゃんと同じ日で大丈夫かな?」

「はい。大丈夫です」


金曜日はちょっと危ういかな…と思っていたが、金曜日、まゆ先輩はシフト7時からみたいで、5限終わってすぐに大学出れば間に合うよ。と言ってくれたので金曜日もシフトに入ることになった。


「通勤方法はまゆちゃんと一緒に来るってことらしいけど、まゆちゃんと一緒に来れない日は交通費出すから領収書もらってきてね」

「分かりました」

「最後に、一言だけ言わせてもらうね。面接とか全く関係ないけど、今年入ってまゆちゃん、めっちゃ明るくなったんだよね。間違ってたらごめんねだけどまゆちゃんを幸せにしてあげてね」

「はい。ありがとうございます」


最後に店長さんとそんなやり取りをして面接は終わった。店長さんにお礼を言い、表に出る。まゆ先輩にまた後でね。と言い、僕はショッピングセンターで一人で時間を潰すのだった。





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