第4話 デザート
「あ、そういえば食後のデザートにチーズケーキ作ったんだ。りょうちゃんチーズケーキ好きでしょう?」
「え、本当?めっちゃ好き!食べたい!」
昔、春香のチーズケーキを何度か食べたことがあるが、本当に美味しくて大好きだった。
「じゃあ用意してくるね。あ、コーヒーか紅茶かジュースどれがいい?」
「コーヒーでお願い」
「わかった。ちょっと待っててね」
春香は立ち上がり台所に向かった。冷蔵庫が開く音が聞こえてから少しして切り分けられたチーズケーキが運ばれて来た。チーズケーキをソファーの前にある小さな机に置いた後、春香は机の上に置いてあったドルチェグストにカップをセットしコーヒーを淹れてくれる。自分と僕の前にコーヒーを置いた春香は早く食べて!と言うような表情で僕の方を見つめる。あぁ、かわいい。僕は「いただきます」と春香に言いさっそくチーズケーキを口に運ぶ。
「美味しい!」
僕の反応を見ると春香は満足そうな表情をした。そんな春香をかわいいと思いながら僕はあっさりとチーズケーキを完食した。夜ご飯で限界まで到達したはずの胃袋だがこのチーズケーキは別腹のようだ。
「おかわりある?」
「あるよ。用意してくるから待ってて」
春香はそう言いながら自分が使っていたフォークを食べかけのチーズケーキが置いてあるお皿の上に置く。そして鼻歌を歌いながら台所に向かって行った。そして数分後、先程と同じくらいの大きさのチーズケーキを持って来てくれた。春香が作ったチーズケーキはタルトとケーキの中間くらいの柔らかさでコクがありとても美味しい。しかもくどくなくかといって味が薄いわけでもないちょうどいい甘さなのだ。いくらでも食べられる。僕はあっさりと二つ目のチーズケーキを完食した。
「おか…」
「ダメ、食べすぎ」
僕の言葉を遮り春香は拒絶する。
「そこをなんとか…あと一個だけ…」
「仕方ないなぁ…あと一個だけだからね」
春香は仕方ないと言いながらも嬉しそうな表情をして台所に向かって行った。そしてチーズケーキを持って僕の隣に座る。
「はい、りょうちゃんあーん」
またですか……春香は顔を真っ赤にしながらフォークの上に乗っけたチーズケーキのかけらを僕に差し出してくる。
「え、また…」
僕としてはめっちゃ嬉しい。好きな人にあーんしてもらえるとか最高の状況じゃないか…だが、春香がどういう思いで急にあーんして来たのかわからなくてつい嫌そうな感じのことを言ってしまった。
「え、嫌…かな?」
春香は一瞬で青ざめたような表情になり目に小さな涙を浮かばせる。
「いやなわけないじゃん」
僕はそう言って春香がずっと構えていてくれたフォークを口に加える。そして、フォークの上に乗っていたチーズケーキを口の奥に運びフォークから口を離す。
「えへへ、嫌じゃないんだ。じゃあ、もう一回、だけ…」
春香はそう言いながら再び僕の口にチーズケーキを運んでくれた。何、このかわいすぎる生き物は……嬉し死という新しい死に方をしてしまいそうなぐらい嬉しいんだけど…
結局チーズケーキ一つ丸々あーんで食べさせてもらった。今なら死んでもいいと思えるくらい幸せな時間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます