第3章

第76話 REPAIR⇐

https://novelup.plus/story/755787036/984487231

上記URLは他社サイト様に掲載中の青空海渡様よりいただいたFAです。(気が向きましたら)


※今回より第3章に入ります。

よろしくお願い致します。


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DAYBREAK夜明け階級総入れ替えバトルが中断そして延期という、何とも言えない結末を迎えてから、三ヶ月の時が過ぎ……



 騎士団の混乱は漸く落ち着いてきていた。



──



「……集合」

「第一部隊! 集合っ!」


 ヤミィさん(※)の凛とした声が、ランの訓練場全体に響き渡る。


※第一部隊副隊長(第二章で登場済)


 その近くにいた俺は、その直前にグレイさんが小さく同じことを呟いたのが聞こえた。


(ふっ、もう……ヤミィさんが隊長ってことで良いんじゃないか?)


 そう微かに笑みを口元に浮かべてから、握っていた剣を鞘に収め、小走りで隊列に加わりに行く。



「よお! ハク。ははっ、また隣だ」


 ニッと無邪気に笑ってこちらを見てきたのは、相変わらず金髪に黒キャップのスタイルを崩さないジークだった。


 目深にかぶった黒いキャップのつばから覗かせる人懐っこい笑顔。


(そうだった。あれ以降、こいつも第一部隊に入ったんだ)


 彼の階級は新兵のままであるものの、この間の総入れ替えバトルでロキさんに実力を買われたようで、第一部隊への入隊が決まったと聞いている。


「ああ、ほんとだな。これからもよろしく」


 忘れていた事を悟らせないように平然を装い、俺もそれに笑い返す。


 正直、同じ新兵である彼がここに入ると聞いた時、少しだけ気が楽になった。


 第一部隊は何かと周りにエリート扱いされる分、反感も買いやすい。しかし、ジークが入ってから、明らかにそれは表に出なくなっていた。


(ん……まあ、言いづらいか。こいつのバックには心強い軍師がいるからなぁ)



──パンッ


 ジークとの和やかな空気を引き締めるように、手を叩く軽快な音が鳴った。


 第一部隊隊員が、全員姿勢よく顔を前へと向ける。


「よし……揃ってるね!

 それじゃあ早速、本題に入るよ!」


 整った正方形に組まれた隊列の前に泰然と佇む、グレイ隊長とヤミィ副隊長。


(あ、そういえば……他の隊員は二人の関係を知ってるのか?)


 俺はふとそんな事を思ったが、首を軽く横に振って雑念を払い、気合いを入れ直して周りと同様に前を見据える。




 ヤミィさんが明るい声の調子でサラッと告げたのは、カリアス団長から受けた命令伝達だった。


 それは以前のあの会議に参加していた俺からすると、だいたい予想通りのものではあったのだが……



──────── ◀︎◁◀︎◁ ────────



「……俺は今から秘密シークレットスキルを全て集める為に、Goddesses女神達の本拠地へと向かう。お前らに他の団員を欺き命を懸ける覚悟があるというのなら、何がなんでも俺についてこい。もし全てを集めてそこに辿り着いたら、お前らにも見せてやるよ。このゲームに隠された、残酷な裏側を──……」




 団長について行くことを決めたあの夜。


 俺は尋ねたいことがあり、ロキさんの部屋に訪れていた。




「あの……これは反論や皮肉ではない純粋な疑問です。どうして団長は秘密シークレットスキルを全て集める必要があるんですか?」


 そのあまりにド直球な質問に驚いたのか、ロキさんは珈琲を淹れたコップを手に持ったまま、しばらく呆然と俺を見つめていた。


「え、え……っと、そうですね」


 カタッと小さな音を立てて前の机に珈琲を置くと、ロキさんは困ったように窓の外を見遣る。


 ソファに座っていた俺は、顔を上げてその綺麗な横顔に目を移すと、答えの続きを促すように黙ったままそれを見つめていた。


「ふふ、どう言い逃れしても、貴方はどうせ引き下がらないのでしょうね」


 呆れたように淡く微笑み、徐々にその視線を窓の外から俺の顔へと移していくロキさん。


 しばらくして、その澄んだ蒼色は俺の視線とバッチリ重なった。


秘密シークレットスキルを……全て集める必要がある、というのは少し違いますかね。正確には、その全てを改修リペアする必要があるのですよ」


(え、改修リペア……? って、このゲームの世界から消し去るってことだったよな?)


「ど、どうし──」

「ある人を助ける為」


 俺の言葉を遮ったのは、強い意志の含まれた断言。しかし、その声はいつもの妖艶なそれと違ってどこか余裕が感じられなかった。


(ある人──……?)


 首を傾げた俺と、ロキさんの目は合っているはず。


 なのにロキさんは俺を見てはいなかった。



「っ……今はそうとだけ言っておきますよ」


 絞り出したように掠れたその声と、悲しげに揺れる瞳の奥が、もうこれ以上は聞かないで欲しい、とでも言うように俺に強く訴えかけてくる。


(いや、今のだと分からない事が増えただけ)


改修リペア? ある人を助ける為? 


 聞きたいことはまだ山ほどある。


 しかし、


「はい……すみませんでした、ロキさん。

 教えてくださりありがとうございます」


 それに対し俺は、いつもより畏まってそう頭を下げるしか出来なかった。



──────── ▷▶︎▷▶︎ ────────


「……ぁく」


「……ハクっ!」

「おあっ! びっくりした!」


 気づけば、ジークが心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。こんな近くの声が聞こえなくなるほど、俺はそれを思い出すのに集中していたらしい。


「どうした? 何かあったのか?

 もう皆、遠征の準備に向かったけど」


 遠征の準備……? ……──ああっ!


「あ……悪い。ぼーっとしてた。

 今行くよ。ありがとう、ジーク」

「ばっ、何も無いなら良いんだよっ!」


 彼は慌てたように俺の前を歩いて、訓練場から出ていこうとする。銀色のピアスの光る彼の耳はまた真っ赤に染まっていた。


(ふふっ、相変わらず……)


 そして俺もその後を追いかけて、そのまま訓練場を後にした。






 ヤミィさんが俺たちに告げた団長の命令。


 それは、今からこの第一部隊がGoddesses女神達の本拠地を探し求めて、長い遠征に出掛けるという内容だった。








        ……To be continued……

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次回:第77話 EXPEDITION⇐

最終改稿日:2020/10/17

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