第13話 LOCK⇐


「単刀直入に言おう。

お前ハク、うちの騎士団に入らないか?」


────── Coming Soon……──────


 

 日も暮れてきた頃。


 俺たちは、DAYBREAK夜明けの騎士団幹部である二人に連れられて、とある酒場の前やって来た。


「ここが俺たちの本拠地ホームだ」


 そこは至って普通の酒場で、そこら辺に落ちていたような木片に名前を掘っただけの雑な看板が、店前にぶら下げてある。


(ここが本拠地?

 Sランクと言えど案外平凡なんだな)


「あ、ロキさん! ナツさん! 

 今お戻りになられたんですか?」


「ええ。客人を連れてきました」


 いかにも若い下っ端したっぱという感じの少年が、沢山の洗濯物を干しながら俺達の方をちらっと覗く。


「あっ、いらっしゃいませ! あれ……でも、どうしてこんなに? Finlandフィンランドの少尉のかたまで」


 その少年は、干していた洗濯物の隙間からだいぶ怯えたようにレンヤの事を覗き見る。


(ああそういえば、さっきも思ったけど……DAYBREAK夜明けFinlandフィンランドって部分的に面識があるんだろうか?)


「まあ、それは追い追い話しますよ。

 ところで……団長はもう中に?」


「はい。ですが、ロキさんを待ち切れず先にお酒を飲まれています」


「はぁ、どうせお酒の方に飲まれてしまっているんでしょう? ほんとに困った方です」


 常に微笑んでいたロキさんが、呆れたようにため息をついて、項垂うなだれた。


「……まあいいですよ。

 とりあえず、解除リリースします」


解除リリース?)


──ピピッ


『パスワードを入力してください』

 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

『必要スキルを発動してください』

「りん」


 ロキさんが静かにそう唱える。


「何を……」


──ピピッ


『認証しました。

 拠点の施錠ロックを解除致します』


 すると、


──ゴオオオ


 突然酒場の裏側の方から地響きのような大きな音が迫ってきて、カタカタと俺たちの足元を揺らす。


(じ、地震!?)


 しかし周りを見渡しても、俺以外は誰もこの状況に驚いている様子はない。


 そんな俺の表情から察したのか、隣にいたランスがそっと耳打ちしてくれた。


「騎士団の拠点は個人の拠点と違ってさ、普段は周りから見えないように施錠ロックを掛けられる仕組みになっているんだんだ。まあ、ここまで完璧な施錠ロックは俺も見た事ない。さすがSランクってところだね」


 ログインから三年目にして、こんなにも初めて知る事実の多い事に俺は愕然とする。


「え……」


 しかし、さらに驚くべきものが目に飛び込んできてハッとした。


「……!?」

 

 突如、目の前に広大な庭と巨大な邸宅が現れたのだ。


「は……ははっ、すっげぇ」


 さっきは驚いていなかったレンヤさん達も今度は興奮したように目を見開いて、すっかり言葉を失っている。


「くくっ、なんだその顔は。

 そんなに驚かれるとは思わなかったな」


 ナツさんは笑いながら俺達の方へ振り返ると、相変わらず落ち着いた雰囲気で俺達に軽く手招きした。


「よくぞいらしてくださいました。こちらが正真正銘DAYBREAK夜明けの本拠地となります……なんてなっ」


 あれほど警戒していたはずの俺。


 しかし、鮮やかな緑が一面に広がるその大きな庭園と、月明かりからお城のようなライトアップを受けるその奥の立派な邸宅を目の前に、謎の高揚を制御できない。


 そして、気がついた時にはもうすでに遅くDAYBREAK夜明けの本拠地に足を踏み入れていたのだ。


 周りに合わせ、庭園から真っ直ぐに邸宅の玄関へと続く幅の広い道の真ん中を、緊張と興奮をなんとか抑圧しながら俺は平然とした顔を貼り付けて進んでいく。


 しかしその直後。



──バァァァン!!!


 俺の緊張と興奮は、そのとてつもない破壊音と共に呆気なく消え去ってしまった。





 



        ……To be continued……

────────────────────


次回:第14話 LEADER⇐

※最終改稿日 2020/10/03

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