ログイン⇐ この瞬間、俺は“騎士”になった。

幡ヶ谷 誓

第1章

第1話 START⇐


 昔、騎士道が最盛期を迎えた頃。


 は人々にとって英雄であった。


“博愛心、忠誠心、品格、正義、そして真実が世に陰る時、残虐さ、暴力、不実と偽りが姿を表す。そして世に秩序を戻すために選ばれし者こそ、である。 愛と尊敬、それは憎しみと不正義の対極である。


は、その気高い勇気、善い振る舞い、寛大さ、そして名誉をもって、人々より愛され畏敬される存在たらねばならない。そうして騎士は、愛によって博愛と秩序を世に回復させ、畏敬によって、正義と真実を世に取り戻すのである。”

      

      ラモン・リュイ『騎士道の書』



 時は2XXX年。


─────────今再びその世界が蘇る。



the Age of Chivalry騎士道時代


最新VRMMORPG! 騎士となった貴方が使えるのは、移動系・飛行系・感覚系の三系統の自己強化スキル


それらを上手く使いこなし、目指すは全世界ユーザーの中で最強の騎士!? ただし、必要なのは力だけでなく──……


己の思うままに剣を振り、己の思うままに槍を刺し、己の思うままに弓を引け!


そうすれば貴方は本物の騎士になれる──



          ◆



 二年前。


 俺は青色の幾何学模様に囲まれながら、少しの間、何かを待つ。


【the Age of Chivalry《騎士道時代》】


ログイン⇐

引き継ぎ

リセット


キャンセル



(これを押せばいいのか。おっ、入った)



───────Now Loading……─────



『名前を入力してください』


(は……く。『ハク』──っと)


《性別》

●男 〇女

《生年月日》

1997/11/11 ○公開 ●非公開

《地域・言語》

日本


(ん。……こんな感じか?)



───────Now Loading……─────



『チュートリアルをスキップしますか?』


YES

NO ⇐


(聞く所によると、こういうのはしっかりやっといた方が後で役に立つらしい)



───────Now Loading……─────



 フワッと体が浮き上がる感覚を覚えて、俺は思わず目を閉じる。


 そして、次に目を開けた時はもう、周りの景色は見たことの無い古びた店の中だった。


(ここが……ゲームの中?)


 なんとなく手のひらでグーとパーを繰り返す。体感は現実世界となんら変わりない。


『ここは、騎士団に属していない現在の貴方あなたの拠点である酒場。まずは、この店のマスターに話しかけて、このゲームの基本を教えてもらおう』


 そう、ここは紛れもなくゲームの中。


 改めて自覚して俺は少し手が震えた。


 とりあえず言われるがまま、店のカウンターを挟んで酒場のマスターに声をかける。


『おう、よく来たな。お前は──へぇ、ハクっていうのか! 良い名前だな』


(あっ、この人はゲーム側の人間か)


『──よし分かった。戦い方は人それぞれだがな、基本操作くらいは教えてやろう。じゃあ、まずはじめに目の前の空間をどこでもいいからダブルタップしてみてくれ』


(空間を? ダブルタップ?)


 俺は不思議に思いながらも、マスターのジェスチャーを真似するように人差し指と中指を軽くくっつけながら、言われた通り二回ほど空間を叩いてみる。


 ポンポンッ


「わっ!」


 俺の前に突然、タブレットサイズの画面が現れた。透き通るガラスのような板に、浮かび上がる白色の文字。


『っし、できたようだな。それがお前のプロフィールとステータスを示すSORDソード(Space Operation Record Device)というものだ。この先、常に確認しておけよ』



〈ステータスⅠ〉 ユーザー名:ハク


PROWESS優れた戦闘能力:F

COURAGE勇気、武勇:F

DEFENSE教会、弱者の保護:F

HONESTY正直さ、高潔さ:F

LOYALTY誠実、忠誠心:F

CHARITY寛大さ、気前の良さ:F

FAITH信念、信仰:F

COURTESY礼節正しさ:F



( ……ん? なんだこれは)


『ふっ、それはステータスⅠの初期設定だな。これからゲーム内におけるお前の行動次第でどんどん上がっていくぞ』


「これが、俺の強さを示すものですか?」


『ん、少し違う。これはこのゲーム特有のステータスでな、騎士として必要な要素が示されている。だからこれには騎士としての精神面の評価も含まれているんだ』


(せ、精神面も含まれたステータス)


『お前がこれまでやってきたゲームとだいぶ違うだろう? ……安心しろ。ステータスⅡの方はどっかで見たことあると思うから』


(んや、別に。これまであんまゲームとかやって来なかったからよく分からないけど……)


 俺はマスターの視線に促されて、Ⅰの隣にあったボタンをタップした。


〈ステータスⅡ〉


ハク 【Lv.1】

 職業:騎士

 称号:見習い騎士

 階級:新兵

 スキル:移動系 未取得

     飛行系 未取得

     感覚系 未取得


(お……おお、切り替わった。んー、確かにゲームってこんな感じのイメージかもな)


『スキルについてはまた後で詳しく説明してやるから、まずは操作に慣れろ。SORDソードは手でタップやスワイプが出来れば基本的に問題ない。もし邪魔だったら、この画面を強くはじくとSORDソードを消す事ができるぞ』


 サッと指でその画面を捨てるようにはじく。


(あっ! ほんとに消えた)


『うん、良いな。じゃあ、次は始まりの街に出てスキンと装飾を集めに行こうか』


…………………………──────────


 こうして、なんとか全てのチュートリアルを終え、基本的な操作や戦い方を学んだ。


(よし、チュートリアル終了! あのマスターとも別れた事だし、本格的に始めるか)








 それ以来、俺は【the Age of Chivalry騎士道時代】の中に入り浸り、騎士としてのステータス上げに没頭していた。



──────そして、現在に至る。



〈ステータスⅠ〉 ユーザー名:ハク


PROWESS優れた戦闘能力:SSS

COURAGE勇気、武勇:SSS

DEFENSE教会、弱者の保護:S

HONESTY正直さ、高潔さ:SS

LOYALTY誠実、忠誠心:S

CHARITY寛大さ、気前の良さ:SSS

FAITH信念、信仰:S

COURTESY礼節正しさ:SSS


〈ステータスⅡ〉


ハク 【Lv.MAX】

 職業:騎士

 称号:見習い騎士

 階級:新兵

 スキル:移動系 ☆☆☆☆☆

     飛行系 ☆☆☆☆☆

     感覚系 ☆☆☆☆☆


 俺は以前とは別人になっていた。








        ……To be continued……

────────────────────


次回:第2話 JOB⇐

※最終改稿日 2020/09/28

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