第8話 その6
微笑みながらじっと目を閉じて消滅を待つルルさんと…離さないように必死に抱きしめて泣いている僕…。
その状況が5分…30分…1時間が経過した…。
僕の泣き声も止まり…冷たい冬風の音しか聞こえない沈黙の夜中…。
(は、早く消滅しろ私!は、恥ずかしくて死にそうだぁぁ!なんでなんで!消えないのぉ?お、おかしくねぇ?誰か殺してぇぇ!!うううう…)
顔を真っ赤にして目を瞑って恥ずかしさを必死に耐えている彼女…。
身体の微妙な震えも感じった。
ルルさんは自分を抱きしめて動かない僕が気になったかチラッと片目を開けて見ていた。
もちろん、気付いていたが…見なかった事にした。
(うわー!!こっち見てるよ!めっちゃ見てるよ!ゴミを見る目で見てるよぉー!今の状況まるで死んだフリじゃないか!辛いよぉ…誰か助けてーうう…!)
もうちょっとこのままでして置こうかと思ったが…可哀想になって来たから声をかけてあげた。
「あのー、ルルさん…」
僕の呼び声にこれ以上その死んだフリは続行不能と判断したか…ルルさんは胸の中から逃げるように離れた。
「あ、あれぇー?おかしいな…もう消滅するような感じだったのに…あらまぁー!不思議!」
いいノリだった。
「あの…これはですね…決して嘘ついた訳じゃなく」
「えーと…もう大丈夫ですか?」
「てへっ! そう見たい!…まだ原因が分からないのでな…油断は出来ないが…」
僕はその話しを聞いて少し安心した。
それに進んでいた透明化も元に戻った。
その姿を見て嘘をついたと思えなかった。
ルルさんの無事を確認出来た僕は嬉しくてまた涙が出て来た。
「良かった…本当に良かったよ」
消滅の話しが本当かどうかはどうでもいい…彼女は私の命の恩人に違いない。
泣いている僕を彼女は愛しい我が子のように暖かい眼差しで見つめて頭を撫でてくれた。
「しかし、よくわからんな…消滅する段階で急に復活しておる……どいう事だ?」
ルルさんは自分の体を隅々確認した。
「いるかどうか分かりませんが…本当に!本当に!!神様に感謝です!!」
「君の目の前におるのじゃろうが…ヘックチ!…うん?体が冷えておる…肉体まで再構築されたか…本当にどうしたものかのぅー?」
僕はジャケットに付いた砂を払ってルルさんにかけてあげた。
「おぅ…ありがとう、暖かい…」
「ルルさん …寒いし、良かったらうちに来ませんか?」
「良いのか? 行く当てがない私は助かるが…」
「はい!!喜んで!是非来て下さい ︎」
「うむ!案内せい!」
「はい!」
死と消滅の危機を免れた僕と自称女神ルルさん…。
その奇跡の因果で…この後…僕はどんでもない事が起きると予想も出来なかった…。
異世界で僕…人気やめさせられしまいました…。 @youyama
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