わたくしって、『ヘン』でしょうか?

 某  :ソナタってヘンだよね

 とある:ヘンっていうか、ウザい

 名無し:だよねー。消えないかな

 第三者:死なないかな


 これは・・・誤送信?

 いえいえ。巧妙にも新規アカウントを作成して足跡を残さないようにしておられますから当の本人であるわたくしに送ってきたのは故意でございましょうね。

 それにしても『死なないかな』とは・・・


 さて。

 いががしたものございましょうか?


「皆さま。少しお手をお止めくださいませ」


 わたくしは6限目が終わって先生が教室を退出なさった後に教壇の真正面に立ったのですわ。

 なぜかというに。


「事実だけはっきりしたいのです。決してどなたかを追求したり繰り言を申し上げたりするつもりなど毛頭ございません。わたしが皆さまにお訊きしたいことはたったひとつ」


 ゆっ・・・・・・・くりとわたくしは教室の前から後ろまでをスクロールいたしながら、おひとおひとりのお顔を拝見しましたわ。それで、できるだけ声を張って、わたくしがこれまでに書いてきた小説のヒロインやヒーローたちのように、出来る限り毅然とした表情で申し上げましたの。


「わたしって、ヘンでございましょうか?」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「・・・・・・いや・・・・・・ヘンかどうか、って言えばまあ、変わってるよね」


 なるほど。


「ちょ、ちょっと待ってよ!ソナタさんは純粋なんだよ!僕たちの方が日々の生活の垢にまみれてる訳で、ソナタさんの方があるべき姿なんだよ!」


 あら。この間わたくしに愛を語ってくだすった道標どうひょうさんですわ。ありがたいお言葉ですね。


「ねえ、ちょっとソナタん。なんで急にこんなことみんなに訊く訳?なにかあった?」

「あるか無いかといえばありましたわ、ミツグさん」

「なに?もしかして誰かに嫌がらせされたの!?悪口でも言われた!?」

「いいえ。そこを確認したいのです。たとえば、わたくしは女です」

「・・・・・・はあ?」

「わたくしに向かって『キミは女性だ』と言われたところでそれは悪口ではないですよね。単純に性別の事実を言い当てている訳です」

「はあ・・・・・・」

「ですので、客観的にわたくしが『ヘン』であればそれは悪口ではなく単に事実を言っているだけ、ということになりますわ」

「『ヘン』って言われたの!?」

「はい、概ねそういうことですわ」

「なんてやつだ!」

「ミツグさん。わたくしのためにありがとうございます。ですので、多数決を取らせていただきます。単純化したいのでわたくしが『ヘン』か『ヘンでない』かの二択でお願いいたします」

「ちょ、ちょっとソナタ!それおかしいでしょ!人に向かって『ヘン』なんて言うヤツがダメでしょ!」

「倉本さんもわたくしのために怒ってくださってありがとうございます。ですけれども、一応わたくしもわたくし自身が『ヘン』だという自覚はありますので、それを皆さまにも確認させていただきたいだけなのですわ。わたくしの身勝手と思ってどうぞご容赦くださいませんか?」


 さあ。

 投票です。


「では、まず、わたくしが『ヘンでない』とお思いの方、挙手願います」


 ・・・・・・・・・・・そうですわね。道標さんと・・・・・・そうですわよね。


「では、わたくしが『ヘン』だとお思いの方」


 ・・・・・・・・ふふ

 圧倒的を通り越して、国民の総意レベルでございますわね。

 よろしいですわ。


「では、どうも皆さまお時間をいただきありがとうございました。ご機嫌よう」

「ソ、ソナタ!」


 ふう・・・・・・・・


 さ、今日はこれから如何いたしましょうか。

 アルバイトも無い日ですし・・・・

 あ、けれども、お師匠も今日は次女さんと髪結いに行かれるとおっしゃってましたわ。


 さて・・・・・・・・・


 そうですわね。

 鴨の親子が巣を持っている、諏訪社さまのお池を伺って、小鴨の泳ぎでも眺めて参りましょうか・・・・・・

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