『小さなお話し』 その57

やましん(テンパー)

『出張』その2

『このおはなしは、どこからどこまでも、フィクションです。】


 


 やましんは、巨大な飛行場に近づきました。


 なんで、ごきさんに使われるのかなあ、という気持ちはないではなかったのですが、それでも、仲良くしておくことに、ある種のメリットがあるような気はしていたのです。


 滑走路の裏側を走っているとき、上空から、大きなからすさんが、5羽ほど降りてきました。


 からすさんといいますものは、近くに来ると、なかなか大きいのです。


 それが、集団でやって来ると、結構、怖いです。


 後ろの座席から、カバンを背負ったごきさんが、なにやら信号を出していたようです。


 一羽のカラスさんが、自動車のフロントガラスをこんこんと叩き、付いて来るようにというような指示を、首を振って出してきました。


 「あいよ。」


 やましんは、その、飛んでゆく方向に走りました。


 やがて、カラスさんたちは、ある場所で、柵の上に止まりました。


 すると、普段は入れるはずもない、その柵が、ほんの下のほうだけ、パカッと開いたのです。


 間もなく、空港関係の制服を着た人がやてきて、その柵に、ぴかぴかした小ぶりの『コンテナ』を接続させました。


 コンテナの入口が、自動的に開きました。


 まあ、そうなれば、ここで降りる積りなのは、明らかです。


 やましんは、後部座席の自動ドアを開けました。


 ちょっと、対抗意識もありましたから。


 すると、件(くだん)の『二ごき』は、するすると降りて行くと、コンテナに乗り込みました。


 そこまで終了すると、一羽のカラスさんが、首にぶら下げた、『新品豪華おせんべ』の袋を、やましんんのところに持ってきました。


 『お礼』、ということなのでありましょう。


 まあ、せっかくだから、(いったい、どこから持ってきたのか分かりませんが)、ありがたくいただきました。


 コンテナは、牽引車に引かれて去ってゆき、からすさんたちも、青空に飛び立ちました。


 残されたのは、やましんのみ。


 表側とは違い、うるさい事を除けば、本来は、のどかな田舎です。


 さかんに、滑走路を飛び立つ飛行機を眺めながら、缶コーヒーを飲んだやましんは、帰ることにしたのです。


 しかし、その、やましんの、小さな『流星5号』を、急速力でやってきた大きな乗用車が、キキキ~~っと、二台で挟み込みました。


 「な、な、な、なんだなんだ。」


 紺のスーツに、サングラスの、でっかい体の人間が、五~六人で取り囲みました。


 やましんごときに、コストの無駄です。


「やましんだな? いっしょにきてもらおう。」


「え、え? え~~~~~~~?」


 人類絶滅映画のような雰囲気に、なってきたのであります。




 ****************   🐦      おしまい





















 


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『小さなお話し』 その57 やましん(テンパー) @yamashin-2

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