8年後
俺は高校卒業後、すぐにお笑い芸人を目指した。
そしたら、高卒直後というブランドと母親から与えてもらった顔やスタイルの良さが受けて、デビュー直後にブレークできた。
なぜ、お笑い芸人になったのか??
本当は議員や官僚になった方が力を得られるのかもしれないが、過去に問題を起こした俺が公務員や議員になれるとは思わなかったから、それ以外で有名になる方法はテレビに映る人間になるしかないと思っただけだ。
正直、お笑い芸人で有名になれるかどうかは賭けだった。でも、子供の頃に散々、不幸を味わってきた俺は何故か大人になったら、その反動で願いが叶うと信じていた。俺が売れたのは、根拠のない自信がプラスに働いた結果だったと思っている。
有名になったことで、俺は昔に誓った復讐を実行できる環境が整った。
俺はマネージャーに電話した。
「忙しいところ申し訳ないが、イジメの特集をする番組って最近ないかな?どうしても、イジメを取り上げた番組に出たいんだけど。もしくは、俺の過去を取り上げてくれる番組でも良いんだけど。」
「突然どうしたんですか?イジメの番組ですか、ちょっと探してみますね。私の感覚的には、イジメの番組よりも、鬼丸さんの過去を掘り下げる企画の方が食いつきそうですけど。」
「やっぱり、そっちの方が可能性としては実現しそうだよな。もし、俺の過去を取り上げる企画をやるとしたら、収録だよな?」
「そうでしょうね。生放送っていうのは正直、考えられないですね。どうしたんですか?鬼丸さん、イジメについて何かを語りたいんですか?」
「うん。どうしても、爆発的な人気がある今のこの瞬間でやりたいんだ。もしかしたら、事務所の人たちにめちゃくちゃ迷惑が掛かる可能性があるんだけど、それでも世の中に訴えたいことがあるんだ。」
「・・・」
マネージャーは暫しの間、沈黙していた。
「マネージャー?」
「あー、すいません。もし、このタイミングで事務所に迷惑が掛かるようなことをしたいと思われるのであれば、事務所には内緒で勝手に鬼丸さんがやったという形でネット配信してしまってはいかがでしょうか??今の人気なら、動画配信サイトに最初は普通の動画を投稿して、ある程度のフォロワーが集まったタイミングで、鬼丸さんが本当に伝えたいことを投稿すれば拡散されますし、事務所としてもその迷惑をかけられた際に火消しなどに掛かるお金を事前に回収できますし。」
「なるほど。じゃあ、この件は俺とマネージャーだけの秘密にして貰っても良いかな?」
「わかりました。事務所から何か聞かれた時は、鬼丸さんが勝手にやったことだとシラを切る形になりますが、それでも良いですか?」
「あー、それで良いです。マネージャーにも迷惑を掛けたくないから。俺の人気は恐らくだけど、あと持って半年だと思うんだ。だから、この1ヶ月間である程度のフォロワーを集めたいから、なる早で動画を立ち上げたいんだけど。」
「早速、事務所には動画配信のチャンネルを作るように打診しておきます。デッドラインとなる1ヶ月後までにできる限りのことを協力させていただきます。」
「ありがとう。いつも迷惑掛けてすまない。」
それから俺はマネージャーと二人三脚で1ヶ月間で100万人以上のフォロワーを確保したチャンネルを作り上げることが出来た。
「鬼丸さん、明日がとうとう運命の日ですね。どんな爆弾を投下するのか知りませんが、今の地位も名誉もお金も本当に捨てるんですか?」
「あー、捨てても後悔はない。恐らくだけど、明日の動画で俺の地位や名誉がなくなることは無いと思うが、イジメがなくなる可能性はあるかもしれない。まぁ、あまり言い過ぎるとマネージャーもシラを切りづらくなるだろうから。」
「鬼丸さんが納得した上でやるなら、もう何も言いません。それでは。」
「あぁ、今までありがとう。」
鬼丸は覚悟を決めた。
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