永久の別れ

鬼丸が動画投稿してから数日後、校長、担任、星田父が鬼丸の家に訪ねてきた。

母親は、ひたすら謝り続けていた。僕は、母親を見て自分がしたことをひどく後悔した。本当は、僕がイジメにあっていることを訴えたい気持ちもあったが、僕がここで何かを言うと母親が責められる事になってしまうかもしれない。それだけは何としても避けたい。そういった思いが僕に訴える勇気を無くさせた。


3人が帰った後、僕は母親に謝罪した。

「お母さん、僕のせいで迷惑かけてごめんなさい。お母さんに迷惑を掛けるつもりは無かったんだよ。本当だよ、信じて欲しい。」

「鬼丸、お母さんは分かっているから。あなたが本当はイジメられているんじゃないかって疑ってたの。悪いと思いながらも、あなたのランドセルから教科書やノートを見てて、落書きされていたり、洋服がいつも泥だらけになっているのを知っていたから。でも、鬼丸が私に心配かけまいと強がって一人で戦っている姿を見ていたら、お母さんも言い出せなくなってしまって。その結果、あなたがSOSを出す場所がネットだけにしてしまった。ダメなお母さんを許して欲しい。ごめんね、鬼丸。」


母親は泣きながら僕のことを抱きしめてくれた。

そして、僕の目を見ながら、


「これからは、まずはお母さんに困ったことがあったら何でも相談して欲しい。鬼丸は優しいから迷惑や心配を掛けまいと一人で戦おうとするけど、自分一人では抱えきれない悩みだったり困ったことがあった時は、素直に周りにいる大人や友人を頼りなさい。自分が困っていることを素直に打ち明けて助けを求めることは、全然悪いことじゃない。あなたが助けを求めれば、誰かはあなたを助けてくれようとしてくれるから。約束できる?」


「うん、約束する。お母さん、本当にごめんなさい。」


鬼丸は母親と約束した。



それから母親は慰謝料を払う為に、これまで以上に働く必要があった。朝から晩まで休みなく働き続けた結果、過労により倒れ、そのまま亡くなった。元々、働きづめだったにも関わらず、それ以上に働いてしまった結果だった。


鬼丸は号泣した。何日も何日も泣き続けた。数日間、泣き続けとうとう涙も出なくなった時、母親との約束を思い出した。

『今の僕は困っている。だから、まずは誰かに助けを求めなきゃ』

僕には身内がいなかったこともあり、施設に入っていたが、その施設で働く職員の人たちに何か困ったことがあったら、すぐに相談するようにした。


ちなみに、一番最初の相談は、

「学校を転校したい。」

だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る