Day10

さて、ふて寝してしまった翌日、目覚めはまあまあです。

でもね、今朝はちょっと楽しみなことがあるんです。

昨日の買い物で卵が手に入ったの。


家族といたころは料理なんて食材洗うくらいしかしてなかったけど、今なら日本の料理作ってもいいよね。

だから今日は卵焼き作ります。


小さい暖炉用のフライパンは細長い形なので、これを使います。

ただし、あるのは塩と砂糖と卵だけ。

しかも砂糖とっても高いんだよ。

だから、今日だけの贅沢。


テフロン加工なんて無いから油を少し多めに引いて、薄く溶き卵を入れて、端っこからクリンクリンクリン、とんとんとん。

むむ、ちょっと動かしにくいけど、今生初めてにしては上出来だろう。


ご飯無いからパンを添えて、いただきます。

ああ、ちょっと物足りない味だけど、確かに卵焼きだ。

懐かしいなぁ…。

うん、これからは前世の料理も、材料が手に入ったら作っていこう。

卵焼きとパンと紅茶っていう取り合わせだけど、満足出来ました。


しっかり気持ちがリセット出来たので、今日は朝から刃物研ぎです。

あ、刀なんて呼ばないよ。前世の刀匠さんに失礼だからね。

だからこれは反りの少ないシャムシールかな。

切っ先も刺すために背がまっすぐな柳葉包丁みたいだしね。


まずは砥石だけど、わざと少し粗目にしました。

粗目の砥石で研ぐと、刃を拡大して見たときにのこぎり状になってくれるので、引き切る動作で切れやすくなるからね。

では、研いでいきます。

シャコシャコシャコシャコ……

………

……

なんと、研ぎあげるのに3時間も掛かってしまった。

まあ、荒砥の線消すのに時間がかかったんだけどね。

うん、初めての自作にしては、結構まともかも。


では、柄と鞘を作りましょう。

柄は木を圧縮して片面づつ作って張り合わせます。

木刀の持ち手みたいです。

鞘も木製。

刀身を上に置いて、形を整えてへこませて張り合わせ。


さて、出来上がったらやっぱり試さなくちゃね。

剣を腰ベルトに吊るして、非常食と水、タオル類の入った厚布のショルダーバッグをたすきがけして…。

むむ、剣の上にカバンが…。

革の学生通学カバンみたいなのをリュックにすれば、3WAYで使えるよね。売ってはいなかったはずだから、合いそうな鞄探して改造しよう。


とりあえず槍も持って森に出発です。

まずはゆっくりと素振り。

あー、ちょっと軽すぎるかな。

切っ先を柳葉包丁みたいにしたから、重心も手元寄りだね。

刃筋に注意しながら徐々に早くして…

ヒュ、ヒュ、ヒュ

あ、ブンブン音のする振り方はしないよ。

切っ先が対象物に当たる直前に急加速すれば、疲れにくいし運動エネルギーも無駄がないから。

プロゴルファーのスイング音みたいに、ボールに当たる直前だけ急加速する感じかな。

例えば剣を右手に持って対象物を左から右(自分から見て)に水平に切る場合、最初は左足重心で切っ先は自分の左肩の横。身体は対象物に対して右肩のうしろ向いてる。

要は右肩を中点にして身体に巻き付けてる感じ。

ここから左足で踏み出す。

右足が着地する直前に身体の捩じりを戻しつつ、着地と同時に巻き付いてたものを一気に戻して切っ先を対象物にぶつける。

対象物と剣が接触したら、右の足先、足首、膝を使って、少しだけ重心を後ろにずらすと引き切りになります。

そして対象物を切断し終わった切っ先が、右の手首、肘、肩と一直線になるイメージ。

このイメージ通り、ゆっくり目に振ってみた。


ピュ!って風切り音が鳴った。

でも、このイメージ、全力で素振りできない!

右肘痛い!

だよね。

本来対象物に転嫁される運動エネルギーが全く減ってない!

これ、当てそこなったら自爆だね。

仕方ない、さっき8割くらいで痛かったから、6割くらいに抑えて使おう。


で、さっきの理論に基づき、色々な角度からの攻撃を、近くの枝君に試して見ました。

5cmくらいの枝なら、結構スパスパいけるね。

薪作り便利かも。


さて、そろそろ奴らを探さねば。

あちこちうろうろして3匹狩りました。

槍との間合いの違いにもちょっと慣れてきたかな。


バッグが抜剣に邪魔なので、抜身のダンビラ下げて森の中を徘徊する私です。

なかなか奴らがいないので、中央の森の奥の方まで来ちゃいました。

この辺りは尖った岩が埋まってて、薬草の少ないところです。


お、スライム反応!

あれ?いないぞ?どっか隠れてるな。

慎重に反応の有る場所に移動します。

ダンビラさげて。


あ、いた。

雪解け水が岩の割れ目に流れ込んでて、地面がちょっとしたクレバスみたいになってる底にいました。

2m位下で水たまりに浮いてます。


あいつ浮くんだ。

下半分程が水中に沈み、ジャンプしようとしてるみたいだけど、下が水じゃあ跳べないよね。

横の壁を登ろうとしてるみたいだけど、この角度登れないんだ。

裂け目はVの字になってて、壁の角度は80度くらいかな?

水が流れ出る数センチの隙間が有るけど、あいつ狭いと入れないんだな。


ザマみろ、人なんか襲うから罰が当たったんだ。

討伐したいんだけど、槍も届かないし、入るには狭すぎる。

どうしよう。

近くの小石を拾って思いっきり投げつけてみたけど、一瞬へこんだだけだった。

ちくせう。

状況はざまあだけど、生かしておくのも腹立つな。

槍に紐つけて投げたいけど、軽装だから紐無いしな。

え?魔法?。

無理だよ。魔法は自分の周り1mくらいしか効果無いよ。

ファイヤーボールは作れても、放ったら霧散するよ。

しかも、動物とかの魔力濃いのは、魔力でレジストするのか、効果範囲内でも効かないんだよね。


何かないかな?

あ、周り見てたら毒草見つけた。

熊とか退治する時に使うやつだ。

でも、ここじゃ調合できないし。

なんか悔しい!

思わず毒草引き抜いて投げつけた。

平然としてやがる。腹立つ!

あ、あれ?あいつ毒草消化し始めたぞ。

普段は草なんか食べないのに。

ひょっとして何日も前にはまり込んで、なんにも食べてない?

よし、毒殺しよう。

近くに群生してた毒草を、手あたり次第ぶつけてみた。雑草や小枝みたいなのも混ざったけど、しっかりと吸収してやがる。

お、何か動きが活発になってきた。毒で苦しんでるのかな。

さっさと死ね。

……

30分ほど経ちましたが、全然死にやがりません。

相変わらす活発に動いてます。


ひょっとして私、餌与えちゃった?

ウガー!悔しい!!

何とかして殺してやる!

………

ごめんなさい。土で槍作って投げたら、あっさり死にました。

気付けなかった私が悪いんです。

許してください。

でも、言い訳させて!

スライムが水に浮くのも分かったし、急傾斜は登れないのも分かったし、食べるもの無いと毒草でも消化するの分かったから!

ただの言い訳だけど!


気を取り直して小屋に戻ります。

帰り道、考え事してたらスライムに襲われました。

探知がおろそかになってて、驚いて全力で切っちゃいました。

剣、曲がりました。

刃筋はちゃんと通せてたけど、全力で切ると曲がるのね。


よく考えたら、私って、レベルが上がってて兵士さんより力あるよね。

普通の武器の耐久力じゃ、私の力に耐えられないの当然だよね。

あー、レベル相応の武器が必要なのか…。

喜んでレベル上げてたけど、ちょっと考えなきゃね。

ダンジョンで暴れた時、槍、よく壊れなかったな。

両親に買ってもらった槍だから、大切にしなきゃね。


小屋に辿り着いた私は、気分を切り替えて洞窟作りです。

9mの縦管の底から10cmだけ上げて接続した横管に、間隔数cmの鉄格子みたいなの取り付けました。更に縦管には、上がら3mの所に落下防止の円形グレーチング、最上部は蓋を作りました。


スライム式浄化槽!

そう、これを考えててスライムに襲われたんだよ。

奴ら、未来でひどい扱い受けるってわかったのかな?

でも、その未来は避けられないいいだよ。


土でスライムがぎりぎり入る檻を二つ作って、再度お出かけです。

よし、スライム出てこい。


やっぱ少ないなー。

2匹捕まえるのに1時間くらいかかっちゃったよ。

ではお待ちかね。スライム拘留刑です。

縦管の底、横管との接合部の前に檻をならべて固定します。

これで、入ってきた汚物はスライム檻を通してしか横管に流れません。

スライム式浄化フィルターの出来上がり。


でも、あいつらは森の動物捕食してるはずだからしばらくは飢えないよね。

しばらく放置してから雑草放り込んで様子見よう。


で、排水系が出来たなら、当然給水系が欲しいわけですよ。

なので、洞窟掘り進みます。


数m掘り進むと、地質が変わってきました。

掘り始めたころはわりと黒っぽい土でした。

で、途中からは粘土っぽくなってたのですが、今度はオレンジ色の土というか砂と白っぽい小粒の石が出てきました。

染み出してくる水も少し増えてる気がします。

おお、これは期待できるかも。


ワクワクしながらもう少し掘ると…。

うわー、まじですか。

水晶の大きな晶洞です。

ちょっとした洞窟ほどの割れ目が奥に向かって続いてます。

ランタンの光では奥まで届きません。

見える範囲だけでも、がっつりあちこちから花が咲くみたいに水晶のクラスターが生えてます。


わー、きれいだなー。

でも、水は晶洞の底にちょっと溜まってるだけです。

その水も、洞窟横の溝から流れて行き、どんどん水位が減ってます。

長年に亘って染み出してきた水が溜まってただけみたいです。


しばらくぽけーっと幻想的な晶洞を眺めてたんだけど、水脈はまだ見つけてません。

気を取り直して洞窟掘り進みます。

洞窟補強するには水晶クラスターちゃんが邪魔なので、収穫しちゃいます。

透明度高いわー。

これだけきれいだとインテリアにしたいよね。

キリも良いし、換気ダクト作りながら持って帰ろう。

換気ダクト、手動換気扇に繋いだので、しばらく水晶眺めながら換気します。

水晶、日の光の下で見たら、めっちゃキラキラしてる。

根元の方まで透明なのが何本も生えてるし、中央部のなんてかなり太い。

よくこんなに育ったな。

あの晶洞、クラスター以外にも細かいのびっしり生えてたな。


あ!石英ガラス作ろう!

小屋の窓、木の板の仰ぎ窓だもんな。

窓ガラス二重にしたかったから、ポーション瓶流用はさすがに躊躇してたんだよ。

小っちゃくて透明の水晶いっぱい生えてたから、材料には困らない!

よし、袋持って収穫しに行こう。


まずは足元から取って行かないと歩けないよね。

うわー、小さい水晶だけでも袋、いっぱいになりそう。

大漁だー!

数m足元の水晶取っただけで、袋はパンパン。

ランタンで奥を照らしてみたら、持って帰ったクラスターよりおっきいのがあちこちに。

しかも奥は見えない。

いやー、こりゃ当分はガラスの材料に困らないわー。

えへへ。


小屋に戻って大量の収穫ににまにましつつ、紅茶でも飲みながら窓ガラスの設計考えようとしたら…。

水がめの水が無い。

そうだった、私って水が欲しくて洞窟掘ってるんだった。

あれ?地下室がメインだっけ?

どちらにせよ、思わぬ収穫に浮かれてないで、ちゃんと洞窟掘ろう。

水は、もう夕方だし、魔法で補充しとこう。

湧き水の方がおいしいけどね。


ああ、さっきまで洞窟掘ってたし、水生成したら魔力ほとんど無くなったな。

身体だるいから、おとなしく窓の設計考えよう。

仰ぎ窓外してハメ殺しにする?

あ、外から丸見えになるか。換気も出来ないし。

窓自体を仰ぎ窓にして、中にカーテン掛けるか。

木で窓枠作って、枠と同じサイズのガラス窓外に掛ければ、隙間風も無くなるか。

今って、暖炉使うと窓と扉から隙間風が…って、そうだった。

暖炉の吸気口も作るの忘れてる。

やることリストに書き忘れてたよ。

いつもリストが目に付くように掲示板も作ろう。

リストに追加追加。

あ、鞄もか。


では、そろそろ夕食作りますか。

あー、食料庫もリスト追加だね。

今は傷みにくいように暖炉と反対側に置いてるけど、暖炉の性能が上がったから隅っこでも温度高目なんだよね。

それに、部屋が狭いから多くは買ってこれないし。

やっぱり崖の一部を食料庫に使えないか、隊長さんに相談してみよう。

許可出たら入口、いちいち偽装しないで済むし、動く棚とかで洞窟への入り口隠したりして、秘密の通路っぽくって楽しそう。

村でも小さい地下室作ってあるおうちが結構あったから、地下の使用もありなんだと思う。

よし、リスト行。


夕食食べて、少し休憩してから、再度洞窟掘りです。

さっき考えた偽装食料庫、作っちゃおう。

だって、洞窟掘ってる間、換気の為に入口開きっぱなしなんだよ。

そのうちバレそうだから、見られた時に食料庫って言えるようにしとかなきゃ。

許可はバレないうちに取れればラッキーってことで。


まず、入口1mほど入って右側に2mほど横に掘ります。

次に、奥側の壁に幅1mほどの棚を2つ作ります。壁を掘って棚にした感じです。

そして正面入り口にも、その辺に転がってるレンガで、同じような棚を作ります。ただし、下部をレール式にして洞窟の床にもレールを作ります。

これで見た目はおんなじ棚が3つ並んでるだけに見えます。

出入りは棚を洞窟側に押し込み、右に現れた人が1人だけ立てるスペースに移動します。

棚を戻せば洞窟の中!

この形状なら、多くの敵が一気に入ってくることはできません。

誰と戦うのかはしらんけど。


ロックは隣の棚の後ろに付けた閂上の棒を動かすだけ。

ただし、棚の後ろ板はちゃんとあるので、閂の存在を知ってて、後ろ板越しに魔法で動かせる人だけが解除できます。

おお、何かかっこいい!

食料庫のドアも、正面から20cmほど奥におして、引き戸のようにスライドさせないと開きません。

ついでに表面を崖っぽく偽装しておきます。

外からだと、近距離でドアの形の狭い隙間が少し見えるだけです。

あれ?偽装ドアだけでよかったんじゃあ…。

い、いや、食料庫は要るんだからこれでいいんだ!

小屋に小さい地下室作れば、わざわざ外に食料取りに行かなくてすむよねって言わないで。

ダメージでかいから!


小屋の地下室は、上に石造りの家乗ってるから落盤が怖かったんだよ!

結構な強度で壁、強化できるなんて知らなかったんだよちくせう!

いいもん!無心に洞窟掘って忘れるもん!


晶洞の地点から先に洞窟掘り進んだら、花崗岩いっぱい出てきました。

こいつ、圧縮してもボロって崩れるから補強には向きません。

あちこちに転がしてあったレンガ持ってきて補強しました。


なんとか花崗岩エリアは抜けたらしく、土に黒っぽい石が混じるようになったところで、今日は終了です。

小屋に戻って、裸族少女して寝ました。

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