Day7

翌朝、大量投入した薪は全て灰になってたけど、部屋、ほのかに暖かい。

息を吐いても白くなりません。

天井を二重張りすれば、冬もいけそう。


暖炉に少し薪を投入して朝食作り。

フライパンでベーコン炒めて、パンに切り込みを入れて春野菜と共に挟みます。

お茶も淹れてパクつきます。

あったかい食事、うまー。


気分よく採取の準備してたらもよおしてきた。

…ふう、やっぱりトイレ改造の優先順位上げよう。


寒さ対策なら洞窟内にトイレ作ればいいけど、給排水がなぁ…。

ここって雪解け水が豊富だから、地下水脈も結構あるよね。

洞窟掘り進んだら水出てくるかな?


あ、排水先に考えないと、洞窟内水浸しになっちゃうね。

近くにある窪地向いて下水掘ればいけるかな。

でも、垂れ流しになっちゃうから山を汚すのはなぁ…。

下水施設まで考えるのかぁ……。


まあ、先に排水路掘っておかないと洞窟掘り進んで水浸しはいやだから、排水路は掘ろう。下水施設は後で考えよう。

でも、とりあえず便器だけ作って置いとこう。


結論出たので、採取に出発!

あー、これ、いつもの森だわ。

スライム少ない。

討伐優先モードなのに、現在5匹。

スライム刺してないと気が紛れないんだけど…。

いつも3人で採取してたからね。


大廻りして小屋に戻ったけど、7匹しか狩れなかった。

ちくせう。


お昼過ぎ、小屋でポーション作ってたら隊長さんが来た。


「…本当に住んじまってるな」

「うん、お試しで住んでるけど、快適だよ」

「…暖炉まで大きくなってやがる」

「えへへー。夜もあったか、調理機能付きだよ」

「……。今日は形見持ってきた。あと、色々知らせておこうと思ってな」


狭い我が家に入ってもらい、お茶を出す。


「これ、あいつの槍だ」


父ちゃんの槍は、半ばからぽっきり折れてた。

頑張ったんだね、父ちゃん。

あ、やばい、涙出そうだ。さっさと飾っちゃおう。


壁に作ってあった二つのフックに、槍に母ちゃんのネックレスを通して渡した。


「父ちゃん、母ちゃん、お帰り。私、頑張ってるから見ててね」


槍とネックレスに向かって、せいいっぱいの笑顔で話す。


「うぐっ」


ズズズ

ありゃりゃ、私より先に隊長さんが泣いちゃったよ。


槍を見つめてると私も泣いちゃいそうなので、団長さんの前に立ってお礼する。


「ありがとう、父ちゃんと母ちゃんを連れてきてくれて。二人が見てるから、いっぱい頑張れるよ」

「お、おう、そうだな。めそめそはダメだな」

「うん。今日も頑張ってポーション作ったから、持って行ってね」

「ああ、いつもありがとうな。隊のみんなも本当に助かってる」


二人の形見に、私が頑張ってるのを知らせたかったのか、隊長さんは、私を褒めてくれる。

お、これはチャンスか?

隊長さんの気持ちを利用するみたいで悪いけど、頑張りアピールってことで押してみよう。


「あの、私、もっと頑張れるから、ダンジョン内の討伐も手伝わせて」


視線を形見にちらり。


「い、いや、でも、それは…」


お、精神攻撃が効いてる。否定の言葉は言いにくいんだ。


「私、スライム相手なら大丈夫。この前も南西の森で50匹以上倒してきたから」

「お、おい、まさか一人でか?」

「うん、あいつらは父ちゃんと母ちゃんの仇だから、時間があったら倒しに行くの。でも今日は探しまくっても7匹しか狩れなかったから、午後はもっと奥に行かなきゃ」


親が死んじゃってちょっとおかしくなってる風を装ってみた。

でも、実際、悲しさを紛らわせるために狩ってるんだから、嘘ではないよ。


「おいおい、ちょっと待て!一人で森の奥なんて危なすぎるだろう。

止めとけ」

「…うん、だから頼んでるの。兵士さんと一緒の方が安全でしょ?」

「それは…」


ぬ、しぶといな。


「ダメだったら一人で奥へ行くから、隊長さんには迷惑かけないよ」

「いや、そう言う事じゃなくて…」


ぐぬぬ、まだ抵抗するか。ならば――


「何であれもこれもダメなの!?私、頑張って祝福まで貰ったのに!!」


必殺、子供のダダ攻撃。頑張る方向が違うのはわかるけど、わからないふり!


「…わ、わかったから。ダンジョン連れてくから、一人で森の奥に行くなんて言わないでくれ。な?な?」


言質取った!ついでに予定も決めちゃおう。


「ありがとう!いつ連れてってくれるの?」


満面の笑顔攻撃。表情筋、頑張れ!


「あ、え、と…」


このあと、笑顔で問い詰め、泣きそうな顔で条件を譲歩させ、明日のダンジョン討伐への参加をもぎ取りました。


小屋の前でブンブン手を振ってお見送りする私。

どっと疲れた顔で帰って行く隊長さん。

ごめんね、隊長さん。実力見てもらう機会が無いと、過保護が解除されないからね。


さて、ダンジョンに入れることになったので、森の奥での討伐は自粛です。

あくまで自粛だよ。

だって、約束してないもん。


で、そうなると午後の予定が空くわけで…よし、排水路の排水先候補を決めよう。

流石に小屋の周りに自然排水では、洞窟の存在がバレます。

洞窟、無許可で掘ってるからまずいのです。

なので、小さなトンネル掘って、こっそり排水できるところを探します。


第一候補地。南南西に50mほど行くと結構急な窪地になってる部分があります。

窪地に行き、近くの木にロープを結んで降りてみた。


底の地面は…あれ?濡れてない。

今は雪解け水がこの窪地にも入り込んでるのに溜まってません。

おお、この時期でこれなら、排水しても池にはならなそうだね。

窪地内も低木が生えてるので、排水口が隠れそうだし。


洞窟との位置関係は、目測で10mくらい下がってます。

ちょろちょろ流したいので、洞窟側を縦に掘り下げて、窪地まではゆるい傾斜にすればいけそうです。

将来的にあちこちから排水を繋げるにも、縦の排水本管?があれば便利そうだしね。


でも、二酸化炭素って重かったよね。

洞窟は、入口開けると内部の温められた空気と冷たい外気が循環して、奥でも足元がひんやりしてたからいいかと思ってたけど、縦穴はさすがにまずいよね。

窒息死なんてしたら、向こうに居る両親にどやされる。

ああ、サーキュレーター欲しい。


前世の世界はコンクリートやアスファルトばかりで、あんまり好きになれなかったし、電化製品の無い今の不自由な生活も苦にならなかったけど、こういう時はちょっとうらやましい。


あ、お風呂は入ってみたいかも。

こっちは共同のサウナっぽいのがあるだけで、あのとんでもない熱気は息苦しいんだよ。

燃料代のせいで料金高いし、毎日はやってないし、帰り道寒いし。

内風呂かあ…いつかは作りたいな。


おっと、脱線しちゃった。今は換気だよ。

植物…は明かり無いから無理だな。

酸素を魔法で作る?炎が作れるんだから出来そうな気もするけど、沈殿した二酸化炭素は減らないんじゃないか?

ダクト作って魔法で外の空気を押し込むか?

ん?押し込んだ空気が上に上がって来ちゃって二酸化炭素残ってないか?

あ、ダクトで吸い出せば空気の入れ替え起きるんじゃないか?

でも、空気を吸うって、魔法で何とかなるのか?

うーん……。あ、棒の端に扇風機の羽根みたいなの作ってダクトに押し込んで回せばいけるか?


うし、実験実験!

まず、洞窟を5mほど入って左を少し拡張して縦穴用の場所を確保。

外に近いと水音聞こえるかもしんないからね。

次に1mほど掘り下げます。

直径は自分が入って掘り下げるんだから60cmくらいで。

そして縦穴の壁にダクト作ります。


うーん、キレイな円筒にならん。

あ、長方形っぽく張り付けた方が邪魔にならないか。

で、ダクトをお外まで延長。

排気口は羽根回すんだから円筒形で。


ぐぬぬ、円筒は難しいな。

手直し、手直し。

多少歪だけど、羽根の所がきちんと回ればいいか。

そして扇風機の羽根。

これまた難しいな。

面倒だ、長方形いっぱい作って棒に斜めに付けよう。

出口には軸受け作って完成です。


いざ、棒よ回れ!

うわ!やばい!。

竹とんぼみたいに中に進んでっちゃった。

抜け止め要るよね!


まあ、何とか思った構造にはなったので、オイルランタンを縦穴の底に。

外に出て再度稼働。


くんかくんか。

おお!オイルの焼けるにおいする。

軸受けベアリングじゃないから減りが早いけど、魔法で肉増しすればいい。

うん、これで何とかなりそうだね。

気をよくして縦穴堀リ再開です。


うんしょ、うんしょ。

予定の9mほど掘ったところで終了です。

やっぱりレベル上がって魔力も増えてるね。

あ、登れないや。

仕方がないので、穴の側面の一部をへこませて、梯子みたいにして上りました。


出入口を偽装して…崖から突き出たパイプ、どうしよう…。

魔力が尽きかけでしんどいので、明日考えよう。


時間はおそらく午後4時ごろ。

今日は煮込み系スープでも作ってみよう。

出汁が無いから野菜と干し肉入れてコトコト煮込みます。

新暖炉君、活躍してます。


さて、煮込んでる間に明日の用意して…そうだ、ミニランタン作ろう。

今あるランタンは結構大きいから、携帯には不便だよ。

暖炉用の鉄板買った時に鉄のインゴットも一つ買ったし、ガラスはポーション瓶流用しよう。

携帯するならオイルよりろうそくの方がいいよね。

オイル切れ用にろうそく買ったし。


あ、加工用の魔力が…あれ?一時間くらいしか経ってないのにわりと回復してるぞ。

魔力無くなるまで使うのって小屋に来てからだし、枯渇してから即、寝ちゃってたから、回復量なんて気にしてなかったな。


よし、ランタン作れる。

うーん、どんなのにしようかな…。

そうだ、金属製のおしゃれな茶筒みたいにしよう。

カシャって引き上げるとガラス部が出るようにすれば、未使用時の割れ防止も出来るし、何よりカッコイイ!

……

………

ダメでした。

円形難しいよ!さっき換気ダクトで経験したばっかじゃん!


仕方がな良いので六角柱状になりました。

角柱は、同じサイズの長方形を作って張り付ければわりときれいに出来るからね。


対角径4cm、高さ10cmほど。

上部7cmほどが上にスライド。

着火消化は魔法。

ろうそくも変形させて太めのを作りました。

ろうそくの交換は底部のガチャハンドルみたいなの回して交換です。

上面にはフック代わりのカラビナ付き。


まあ、思ったのとは違うけど、これはこれでカッコイイ。

よしとしよう。


ふと暖炉に置いた鍋を見たら、結構なアクが…。

せっせとアク取りしました。


若干具材の多すぎるスープ食べてから、壁の形見眺めたままボーっとしちゃいました。


結構長く呆けてたみたいで、気付いたら魔力回復してた。

2~3時間で全回復するの?

これなら、朝一で洞窟掘り、朝食後ちょっと休憩して採取、お昼戻ってポーション作り、しばらく休んで洞窟掘り、ちょっと休憩して家事雑事、夕食食べて洞窟掘り、で、就寝ってサイクル出来そうじゃない?

まあ、明日はダンジョン行だからだめだけど…。

とりあえず、洞窟掘ってこよう。

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