イヴァリース大陸放浪記
惟宗正史
序幕 黒い心
なんと人は愚かなのだ。
己の欲のためなら人を貶めることを厭わず、むしろそれを誇りもする。
これが自分と同じ生き物だと思うと吐き気がする。
見ろ、自分の甘言に乗った愚か者が実の兄に毒を盛った。
地位、権力、名声……そして金。
人はこれらを手に入れるためならなんでもする。
愚か愚か愚か。
人を操るものまた容易い。
その人物に都合の良いことを吹き込み、ちょっと背中を押してやる。
ほら、それだけで畜生に落ちる。この男のように。
自慢そうに己の功績を誇り、家を継ぐのは自分だとうそぶく豚擬き。
これが人なのか?
こんなもののために自分は師の下で勉学に励んだのか?
自分に人の心は理解できないのか?
人とはなんなのだ?
少なくとも目の前のゴミではそれを理解することはできないだろう。
ならば次はどこへ行くか?
人が最も多い帝都に向かうか?
否、それはゴミの集団を見るだけだ。
ならば北の山岳地帯にある傭兵達の国か?
否、あそこにいるのは純粋な戦士達だ。尊敬すべき存在ではあるが人として観察すべき存在ではない。
ならば東の草原に行こう。
あそこに住まうは修羅の民、カサの民と呼ばれる遊牧民達。
他者から奪うことを是とする人とはどんな存在なのか、観察するとしよう。
もし、カサの民もまた愚かであったなら。
私は人類を滅ぼすとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます