19話 剣士、アキネス④
グラウンドドラゴンを討伐した翌日。
僕たちパーティーはギルドに向かっていた。
目的は当然グラウンドドラゴン討伐の報酬を得るため。とはいえ、僕は見ているだけでお金もいらないという約束だったから付いていっているだけであるが。
「お疲れさまでしたー!これが報酬になります、とアキさん?」
受付嬢はエルティナに麻袋を渡すが、その後ろについてきていた僕と目があった。
僕はどうしようと思いとりあえず頭を下げておくだけにしたのだが、それよりも先に行動したのはエルティナだった。
「彼、咄嗟の判断でメンバーを助けてくれたんですよ。とても勇気があって良い冒険者になると思います、なので正式にこのパーティーで引き取ってみようかなと」
エルティナはにこりとこちらに微笑みかける。後ろから背中を押されたような気がして、振り向いてみるとアキネスが受付の方へ行くようにジェスチャーをしていた。
僕が受付に行くとエルティナが再び喋りはじめた。
「パーティー冒険者の追加をします」
どうやら、本来はパーティーに入る時はギルドに申し込みが必要だったようで僕はいきなりだったしクエストにも関与しないという前提だったので申し込みは後回しにしていたらしい。
受付嬢はカウンター下の書類を少しの間ガサガサと探していたようだが、一枚の書類を取り出した。
「それでは、リーダーのエルティナさんと新しくパーティーに加入するアキさんは冒険者証を提出してください」
提出した後、さらに僕とエルティナはパーティー加入証にサインをしなければならないとのこと。
特に渋ることもないのでさっさとサインを書き終えた。
文字については、日本語とほとんど同じ。名前はカタカナで書くが、街には普通に漢字で書かれた看板があったりする。
と、余談はさておきこれで正式にエルティナのパーティーに加入することになった。返してもらった冒険者証を見ると今まで空白だった「パーティー」の欄にエルティナという文字が追加されている。
「これで正式に君も私のパーティーの一員だ、というわけでこれ」
と言って渡されたのは麻袋の中に入っていた金貨のうち十枚ほど。
僕は咄嗟に遠慮しようとしてしまうが、なんだろう、受け取っておかないと逆に気まずい雰囲気になる気がした。
「ありがとうございます、金貨をこんなに」
「もうパーティーの一員なんだからそんなに堅苦しくなくてもいいじゃん、アキ」
何気にエルティナに名前で呼ばれたのは初めてのような気がした。
そうか、僕はもうこのパーティーの一人になったんだな。そう思うととても嬉しく思えてくる。
「とはいえ僕はまだまだ新入りですし……。でも、これからもよろしくお願いします!エルティナさん、そしてアキネスさんとファレルさんも!」
僕はつい癖で頭を下げた。純粋で、邪心のない最高の最敬礼だった。
「こちらこそよろしく!」
「よろしくお願いしますね!」
「よろしくな」
統一性のない三人の返答。でも、それぞれ最大限の歓迎をしてくれていることだけはとても伝わってきたのだった。
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