18話 剣士、アキネス③
「そういえば、新入りは冒険者証ってあったりするか?」
なんとなくファレルと話しづらくなってしまったところを察したのかアキネスが質問してきた。
「これの、事ですか?」
僕はギルドから貰った冒険者証をアキネスに見せる。
アキネスはそれを手に取ると、裏表をじっくりと点検するように確認した。
「Eランクか……。しかも職も冒険者ってことははっきりと決まってないみたいだし、とりあえず自分の得意な分野にしないとランクが上がりにくいぞ?」
「でも、見ればわかると思うんですけど全ての魔法の能力値が同じみたいで得意な分野がいまいち分からないんですよ」
というか、僕は楽しいことを見つけられるまでとりあえず職は冒険者のままにしておこうと思ったのだが……。
「いや、それは自分が何をしたいかで決めればいいんだよ。この能力値なんてあくまで目安だろ?それに全部同じ値なら枷にすらならないさ」
自分が何をしたいか。「楽しいことがしたい」という漠然とした答えではなくて、具体的に何がやりたいのか。
_____言い換えれば、自分にとって何が楽しいと思う事なのか。
僕は、手先が器用だったから何か作品や物を作ったりすることが一番得意で好きだった。楽しいことをしようと思ったのも、幼稚園の頃にそうやって描いた絵が保育士さんや親に褒められたことがきっかけだったっけ。
それをそのまま伝えてしまうと様々な部分で突っかかりそうな気がしたので、僕は簡潔にこう答える。
「何か物を作ったりとか組み立てたり……そういう事がやりたい、ですかね」
「作るとか組み立てる、ねえ。そういった役職だと……」
「錬成士なんてどうよ?創るとか組み立てるとかそういう職業だったよね!?」
いつの間にやら風呂からあがっていたエルティナが後ろから話に割り込んでくる。
パジャマは着ていたようだったが、髪は乾かしてないみたいでバスタオルを首にかけて拭いているようだった。
「錬成士なんてそんな簡単にできる職業じゃないだろ、あと髪を早く乾かせ」
「錬成士はロマンなんだし、むしろアキネスは憧れたことないの?」
「魔法とか魔術は嫌いだったんでな」
エルティナはアキネスのサバサバとした対応に「ちぇー」とだけ言って再び脱衣所に戻っていってしまう。
「錬成士……ってなんですか?錬金術とかそういう感じですか?」
「簡単に説明すればそんな感じだ、素材を集めて一つの物を作る、二つの素材から別の素材を作り出す、無から素材を創るとかな」
ただの錬金術とは違い、素材の変換には何かしらの規則性があるらしいが、よっぽどマニアか本職じゃなければ知らないとのこと。
僕が想定していたよりもずっと楽しそうな職業である。
ネックなのはそれを教えられる人はこのパーティーにはいないということ。
「面白そうですけど、誰が教えてくれるんですか?」
「俺の知り合いに……、錬成士の知り合いがいないこともない」
アキネスは少し間を開けてから言った。
彼はあまり会いたくないみたいだが、いったいどんな人物なのだろうか?
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