16話 剣士、アキネス①
エルティナは脱衣所でとりあえず服を着てきたようだったが、下着オンリーでくつろいでいるのはどこを見ればいいのか分からなくなるのでやめてほしい。
迂闊に話しかければ本当に見る場所が無くなってしまうから僕は黙って寝たふりを続行するしかなかった。
「なーんでアキネスも先にお風呂入っちゃうかなー?私もかなり頑張ったんだけどな」
「それは、アキネスさんなりのエチケットみたいなものがあるのではないでしょうかね?」
「かなり神経質だもんね、アキネスって。あれじゃあモテるものもモテないよ」
アキネスに対する愚痴をファレルが優しく否定していく。
でも流石に最後の言葉はスルーした。下手に言えば色々茶化されるだろうし当然といえば当然である。
だが、ふと僕は気になったことがあった。
「ファレルさんって神官じゃないですか。その、恋愛とかってしても大丈夫なんですか?」
宗教によっては聖職に就いていると恋愛ができないとかそういったところがあったりする。ファレルはどうなのだろうかと、気になったのだ。
「恋愛ですか?他の宗教の事は分からないですけど私が属しているレリュード教は特に問題はありませんよ。というか、結婚とかも取り扱ったりするので恋愛を否定してしまったらおかしくなっちゃいますからね」
案外にも宗教的な異性との交流の規則は無いみたいだ。
というか普通に馴染んでいくところだったこの世界だが、考えてみれば日本とは違う部分も多いだろうし、異世界に転生した本とかを読んでいるとやってはいけないことを知らずにやってしまうみたいな展開があったりもする。
というか単純に知っておいて損はないだろうしなにより自分の知らない事を知れるって面白い。
そう思えば善は急げ。と思って質問しようとしたのだが、目の前にいるファレルが不審そうな顔をしていた。
「あれ、どうしましたか?ファレルさん。何か僕言いましたっけ……?」
「アキさん、その……」
ガチャン。ファレルが何かを言いかけた瞬間にリビングのドアが開いてアキネスが入ってきた。
相変わらず服装は和服だったが、アキネスの毛が落ち着いていて少し雰囲気が違うように感じた。
「エル、さっさと風呂に入ってくれ。あと、風呂に入る前にノックくらいしろ」
「りょうかーい」
エルティナはアキネスが入ってきたドアから出ていった。
アキネスはエルティナの方をちらっと見た後、微妙な雰囲気になっている僕たちに気がついた。
「レル、新入りがどうかしたのか?」
「アキさんは、この世界に元々住んでいたわけではないみたいなんですよ」
すっかり忘れていた、ファレルは心を読むことができるという事を。
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