14話 格闘家?エルティナ④
魔動機兵から命からがら逃げきり、空はすでに夕暮れの太陽の赤みと暗い空が混ざって夜が始まると伝えてくれているようだった。
一日にあった出来事にしては様々な事がありすぎてもしかして夢を見ているのかもしれないと思うほどである。
「そろそろ街に戻らないとなー」
ファレルに治療を受けたエルティナは治った腕を確かめるかのように動かしている。それにしても、本当にタフでびっくりする。
というか、エルティナはSSSランクの格闘家だと思っていたが、どうやら違うようで炎魔法使いだったらしい。それは先ほどの強力な炎魔法で明らかだった。
「凄いですね、エルティナさん。てっきり格闘家だと思ってました」
「でしょでしょ?まあ、格闘の方も最初は炎魔法を使うほどの強さでもない敵をやっつけるために鍛えてはいたんだけどそっちのほうが馴染んできちゃってねー」
下手な格闘家よりも確実に強い。実践慣れしすぎていて実際に炎魔法を使うまでは炎魔法使いと言われても信じないまであるかもしれないくらいには。
「そのうち魔法も拳みたいに放った方が強いような気がしてきちゃってね。制御は簡単なんだ」
と言って試しに一発放ってくれた。
確かに、まるで拳が伸びたかのように炎魔法を使っているから拳の延長線として扱うのは簡単なのかもしれない。
その後、エルティナは右手に手袋をはめる。まるで鍛冶屋が鉄を打つときのような厚く、頑丈そうな手袋を。
「その手袋は一体……?」
「グローブみたいな感じかな?しっかりと固定した方が強い攻撃が入るし、あと炎魔法の扱いが単純な分、この手袋で間違って魔法が出ても通さないようにしてるんだ」
間違って魔法が出るってどういうことなのかと思うと、ファレルが疑問に対して答えを出してくれる。
「エルティナさんみたいに魔法を放った際に自らの身体にも衝撃を受けるような魔法の強さの方だと、アイテムを通しての魔法や、ある程度リミッターとなるアイテムがないと本人の意思に関わらず魔法が出てしまうことがあるんです」
とはいえ自分の身体を傷つけてしまうような魔法を出せる人間というのもレアらしいので魔力の値がそれほど大きくない人はそれほど気にしなくてもいいみたいだ。
「でもまあ、今はやっぱりグローブとしての意味の方が強いけどね」
エルティナが何度か空をパンチするとファレルが
「安静にしていないとまた骨折してしまいますよ」
とたしなめる。エルティナはすぐに大人しくなった。
「そろそろ街に帰るぞ、盗賊でも現れて邪魔されたらそれこそ面倒なことになる」
アキネスがそうしてさっさと歩き始めた。
僕たちは後を追うようにして帰路につく。
帰り道は行きと同じ道を帰るだけなのでそれほど難しいものではない。
ただ、帰りにもかなりの距離を歩いたのでまた疲れがたまってしまう。
そうして街に帰ってきたのはすでに月が僕たちを照らしているころだった。
ギルドはすでに閉まっているので僕たちはこのパーティーで暮らしている家に帰ることになったのだ。
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