8話 神官、ファレル③
「本当は、それはもう嬉しくて仕方ないんでしょうね」
エルティナを優しい目で見つめているその姿はただ純粋に喜びを噛みしめている、そんな感じなのだろう。
でも、パーティーの人数が増えただけで普通は、ましてやSSSランクの冒険者がここまで喜ぶのだろうか?という疑問がよぎる。
とはいえ、エルティナは感情が表に出やすいタイプの人間なのであまり深読みしすぎない方が良いし、もし考えていることが本当のことだとしても雰囲気をぶち壊すのはこちらにとっても面白いことではないからそっとしておこう。
「まあ、僕はまだ弱いので当分戦闘は活躍できないと思いますけど、成長を楽しみにしててくださいね!」
と僕が返すとエルティナは「アキネスを見返してやれー!」と冗談めかしく言う。
そして、「オマエは野次馬か」と冷静にツッコむアキネスの隣で笑っていた。
そうこうしているうちに目的地までたどり着く。
いや、正直に言って結構な距離を歩いたと思う、この状態で戦うのはわりと辛いところがあるだろう。
まあ、エルティナは準備運動くらいにしか思ってなさそうだし、アキネスはまるで疲れなどみせず
「僕はこの木のかげで休憩しててもいいですか?」
「いいけど、出来るだけ私たちから目を離さないでね。君は私たちの動きをまずは見て覚えてほしいから」
僕が変な行動を起こさないように誰かを目付にするのではなく、僕がこのパーティーの目付になるってなんだか変な感じである。
「大丈夫ですよ、前線で戦うのはエルティナさんとアキネスさんの二人で、私はアキさんの近くで保護呪文をかけているだけですから」
なら実質見ていればいいのはエルティナとアキネスだけ。
それにそこそこ離れた場所で戦うようなので二人いたとしても追うのは簡単、なのだろうか。
「そろそろグラウンドドラゴンが来ますよ、砂埃が上がっている方です」
わかる、地面の揺れが伝わってくるし、音も聞こえてくるようになった。
狼煙のように上がる砂埃と木々がなぎ倒されていくような派手な音、それは容易に追跡を可能とした。
確かに、見れば見るほどクエストの依頼書に書かれたものと同じような姿をしていることが分かる。
ただ、これが老年かと言われると全然分からない。その迫力は一目で強そうだと理解できる程度で、あとはそのジャイアントボディに興奮するくらいだろうか。
だが、前線二人組はそれに臆することなく真正面から対峙していく。
そして、それはSSSランク冒険者の力を目に焼き付けられることになるのであった。
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