6話 神官、ファレル①
「あ、そうそう新入り君。君はなんていう名前なの?」
先頭を歩いていたエルティナが振り返ってこちらを向いた。
「アキって言います。今更ですがよろしくお願いします」
「へぇー、アキ君か!私はエルティナ、エルって呼んでくれていいよ。それで、この無愛想な剣士がアキネス、それでアキ君の隣を歩いているのが神官のファレル」
「そういえば自己紹介をしてませんでしたね。でも、エルティナさん?後ろ向きに歩いていたら馬車に衝突しますよ?」
「馬車が大損害を追うから注意しておけ」
「ちょっ、私の心配もしてよ!」
と、僕の見立て通り面白いパーティーである。それぞれ性格は違うが、仲間たちを信頼しているし軽いジョークなんかも言いあったりしている。
「そういえば、グラウンドドラゴンってどんな生物なんですか?」
ドラゴンというからには外皮がとても厚そうだし、力も相当強いと推測はできる。でも
「ああ、それならクエストの依頼書に書いてあったんじゃないかな?」
「私が持ってます。はい、これが今回受けるクエストの依頼書です。どうぞ」
依頼書の上側を目いっぱい使って描かれていたグラウンドドラゴンの絵は、いつかのテレビで見たティラノサウルスにそっくりな造形をしていた。
だが、尾が非常に長くて先端は突起のような物も付いているし、ツメも牙も鋭い。
これは確かに凶悪そうなフォルムをしている。
「でもまあ、ぶっちゃけグラウンドドラゴン一体だけならAランク冒険者が数人いれば勝てなくはないんだよなー」
というエルティナの言葉から少なくともこのパーティーはAAランク以上であることは想定できた。実際のところ、受付嬢からはお墨付きを頂いていたわけだし、相当な実力を持っているのだろう。
「ちなみに今回戦うのは老年のグラウンドドラゴンです。基本的にグラウンドドラゴンは縄張り内に入らなければ襲ってくることはありませんが、老年のグラウンドドラゴンは縄張りを追われて、人里などに出てきてしまうこともありますからね」
なお、老年だからといって装甲が弱くなるとか力がなくなるとかそういったものはなく、若者のグラウンドドラゴンと強さは互角だという。
確かにクエストの依頼書には「縄張りから離れた森に出没を確認」と書いてあるしこんなのが人里に現れたらそれこそピンチである。
「でも、確かにこのクエストの難易度はSになっていますけど、そんなに困難なクエストなんですか?」
あそこのギルドはそこそこ繁盛してそうだったしSランク冒険者もいなくはなさそうであるが、なぜこのクエストは十日も放置されていたのだろうか?
「実はその辺りには魔動機兵が出没するんですよ」
おそらく僕の心の中も一緒に読んだのであろうファレルが僕にそう伝えてくれた。
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