4話 エンジョイ勢、アキ④

 さて、今から一緒に冒険する冒険者を探そうとなると案外にも面白そうなパーティーが見つからない。

 面白そうだったとしてもすでにクエストを終えて完了金を手に入れているところだったり、良いクエストが見つからなかったのかさっさと帰っていった人の方が多かったからだ。

 その他は近寄るなオーラを全面に出したりとか、孤高を貫いているような人が多くいて、もしかしたらこの時間は難易度が高いのか完了金が少ないのかあまり人が来ない時間帯なのかもしれない。


 そんな中で、僕の直感がセンサーのように捉えたパーティーがあった。

 女性二人組のパーティーで、褐色の筋肉質な明るいオレンジ髪の人と神官服を身にまとったエメラルド・グリーンの髪の人がいるパーティーだ。

 武闘家と神官という攻撃系の魔法は使えなさそうだが、物理と補助に特化したこの二人組はなかなか面白そうな気がした。それに、クエストもまるで無造作にとっていくような感じがして、一目見ただけでもわかる強者感を出していた。


「エルティナさんは……、このクエストでも全然大丈夫でしょう。もう十日ほど前から張り出されていてそろそろ棄却しようかと思っていたのですが助かりますね」


「いいのいいの、クエストは思いやりが大切だからさ!」


 エルティナと呼ばれた褐色の女性はにっこりと笑って受付嬢にそう言った。

 それにしても、十日も放置されるようなクエストというのはどんなものなのだろうか、ますます疑問がわいてくる。


「でもあまり無茶はしないでくださいね?見てるこっちはヒヤヒヤしてるんですから!」


「それはごめんな、ファレル」


 怒った顔もかわいらしい神官服の女性はファレルというのか。

 どうやらしっかり信頼関係も築いているようで、なんというか仲のよさげな姉妹を見ているようにも思える。


「それじゃあ、グラウンドドラゴン討伐クエスト頑張ってください!エルティナさん!」


 と受付嬢は笑顔で送るが、そのクエスト名を聞いて僕は反射的に、……それはもう考える間もなく咄嗟の判断で、エルティナと呼ばれる人物の前に立ちはだかった。


「お、どうかしたかい?私を口説くにはまだ早いんじゃないか?」


「僕を……」


「貴方を……?」


「僕を、パーティーに入れてください!」


「駄目だね」


 一瞬で断られた。まるで答えを事前に用意していたくらいには一瞬だった。

 でもその顔は笑顔でもなんでもなくてただ真顔で言い放たれたのだろう。ガチトーンは流石にビビる。


「なんでですか、グラウンドドラゴン討伐とか人数いた方が良さそうじゃないですか?」


「……いいや、君は見た感じ初心者って感じだ。グラウンドドラゴンは初心者がいたとしても雀の涙ほどもダメージは与えられないよ」


 その声は、真剣に、諭すような声だった。

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