第38話 封筒
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「牧原さん。あなたは美零さんの何なんですか?あなたの目的は何ですか?」
大翔の感じた違和感。それは牧原さんの行動の意味が分からなかったことだ。
先程も言ったように手紙を渡すだけなら、美零さんに頼んだ方がいいだろう。その方法ならば、約束も破らずに済む。
それなのに、牧原さんのようなしっかりした人が、今までは守っていた約束を破り、大翔に手紙を渡しに来たこと。
それが大翔には理解できなかった。
「私の、目的?」
「はい。なぜ今になってこの手紙を渡しに来たのか、それを教えてください。」
「ですから、先程も言ったように私は内田さんに手紙を渡すためにここに来たんです。」
「それはもういいです。牧原さんの本当の目的を教えてください。」
牧原さんの本当の目的。それは、この封筒の中身を見ればわかることなのだろう。
だが、それは牧原さん本人から聞かなければならないような気がした。
そしてそれは今しかできない。そんな気がした。
「っふふ。天音が内田さんに執着している理由がなんとなく分かった気がします。」
「こ、こっちは真面目に聞いてるんです。誤魔化さないでください。」
大人の女性の微笑みにやられそうになるも、これも牧原さんの罠かもしれないと、すぐに頭を切り替える。
「私の目的でしたか、内田さんはそれを聞いてどうするつもりなんですか?」
「牧原さんの発言次第ですが、この封筒には目を通さずに破り捨てます。あ、もちろんこのまま何も言わなかったときも同じです。」
「随分と警戒されてるようですね。・・・わかりました。このまま封筒を破られても困りますので、少しだけお教えましょうか。」
大翔の脅しが効いたのか、今まで話す気がなさそうだった牧原さんも、ついにその目的を言う気になったらしい。
「私の目的。それは、天音と内田さんの関係を終わらせることです。」
(関係を終わらせる?どういうことだ。そもそも、そんなことができるのか?この封筒にそんな力が?)
牧原さんの口から出た言葉が大翔には全く理解できなかった。
「関係を終わらせる?それはどういう意味ですか?」
「口で説明するよりもその封筒の中身を見た方が早いと思いますよ。」
(そういうことか。)
詳しくはまだわからないが、やはり大翔の推理は正しかったようだ。
この封筒の中には、大翔と美零さんの関係を終わらせることが可能なほど重大な
情報が入っているということだろう。
「では、私の目的はお教えしましたので今度こそ私はこれで。次に会う時を楽しみにしてますね。」
「その次がないことを祈ってますよ。」
「残念ですが、あなたが真実を知ったとき、その時は必ず来ます。それも内田さん次第ですが。」
「真実?」
先ほどまで友好的で優しい雰囲気をまとっていた牧原さんだったが、一変して、とても冷たいオーラを放っていた。
「その封筒を開けたとき、あなたは真実を知ることになります。まあ、そこにあるのもほんの一部に過ぎないんですが。」
「後は内田さんの自由です。何も知らないまま仲良しごっこを続けたいというなら、破るのも結構です。」
(仲良しごっこ?ふざけるな。)
牧原さんがどうして大翔と美零さんの関係を終わらせたいかはわからないが、今はそんなことはどうでもいい。
牧原さんがなんと言おうが、封筒の中身が何だろうが大翔にはこの関係を終わらせる気は全くない。
「牧原さんは俺を甘く見過ぎです。美零さんがどんな隠し事をしてようが、それを知ったところで俺と美零さんの関係は変わりません。」
「っふふ。その封筒の中身を見た後も同じ事が言えたらいいですね。」
最後にそう言い残して、今度こそ牧原さんは帰っていった。
部屋に戻り、ベットの上に横になると、先ほどまで長い間立ち話をしていたせいで、だいぶ疲れていた。
先ほどまでのことを頭の中で整理してみるが、やはり牧原さんの言っていたことが引っかかる。
この謎を解くための方法は1つしかない。それは、この封筒を開くか、開かないか。
牧原さんの言っていたことがどこまで本当かはわからないが、少なくともこの封筒の中に嘘はないと思う。
この封筒を開ければ、牧原さんの言っていたことの本当の意味が分かるだろう。
牧原さんの目的。それは、大翔と美零さんの関係を終わらせること。
そんな未来は全く想像できないが、そうなってしまうほどの情報がこの封筒には入っているのだろう。
真実を知ることに多少の恐怖はある。だが、牧原さんの言う通り、何も知らないままこの関係をを続けている方がもっと嫌だ。
「よし!」
ついに、大翔は封筒を開ける決心をした。
【あとがき】
毎度のことですが、投稿が遅くなってしまってすいません。実は今週からテスト期間に入っていて、来週はテスト本番なので、次の投稿までだいぶ間が空いてしまうと思いますが、ご容赦ください。
それと、少し前のことなのですが、ついにこの作品のPV数が1万を突破しました!
いつも応援してくれている読者の皆様には、感謝しかないです。
これからも、この作品を書き終えるまではどんなことがあっても逃げださないので、投稿が遅れてしまうこともあるかもしれませんが、引き続き応援してくれると嬉しいです!
コメント、フォロー待ってます!作品を評価してくれると嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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