第37話 違和感
✦
「・・・そうですね、今はあまり詳しくは言えませんが、簡単に言うと私は天音の監督役みたいなものですかね。」
「え?監督役?」
監督役ってなんだ?部活の顧問とか何かか?いや、確か美零さんは部活には入ってないって言ってたよな。
学校の外でなにか習い事をしてるという話も聞いたことないしな。本当に監督役ってどういう意味だ?
牧原さんの言葉の意味を必死に考えてみるも、スポーツ以外のことで監督という言葉を聞いたことがのない大翔には全く分からない。
「あ、あのー。美零さんの監督役って、なんの監督役ですか?」
「すいません。それは天音との約束で言えないことになってるんです。」
「美零さんとの約束?」
美零さんとの約束という初めて聞いた言葉につい固まってしまう。今日は初めての経験ばかりだ。
約束について本当は詳しく知りたいところだが、大翔がいくら聞いても牧原さんは口を開きそうにないので諦めることにした。
「すいません。この決まりは破ることができないので、これ以上は言えません。」
「そういう決まりなら仕方ないですよ。えっと、それなら俺に何の用ですか。ただ挨拶に来たってわけじゃないでしょうし。」
「そうですね。そろそろ本題に入りますか。今日私がここに来たのは、内田さんにこれを渡すためです。」
そういって、牧原さんがカバンから取り出したのは、なんの変哲もないただの封筒だった。
「えっとー、これを渡すためにわざわざ?」
「はい。そうです。」
牧原さんから封筒を受け取りよく見てみるが、やはり特に変わったことはなかった。
「この封筒の中にはなにが入ってるんですか?」
「それは自分の目で確かめてください。」
「は、はぁ。わかりました。」
(そりゃそうだな。そのためにわざわざ来たんだもんな。)
「では、渡すものは渡したので、私はこれで失礼しますね。」
「え、もう帰っちゃうんですか?もう少し話していきませんか。お菓子いっぱいありますけど。」
「誘ってもらったのに申し訳ないんですが、遠慮させてもらいますね。ここにいるのがばれたら少しまずいことになるんで。」
「美零さんにばれたらですか?」
美零さんや優佳さんが来るときはいつも1時間ほど話していってるので、大翔は勝手に牧原さんも同じだと思っていた。
その為、まだ話し始めてから5分もたっていないというのに帰ると言い出した牧原さんには驚かされた。
それに、ばれたらまずいというのもとても気になる。
「はい。実は内田さんと接触するのは天音から止められているんです。」
「え、それってどういうことですか。」
「すいませんが、さっきの約束と関係があるのでそれは言えません。」
「・・・そうですか。」
約束という言葉が出るたびに、牧原さんが申し訳なさそうな顔をしているので、なぜか悪いことをしている気になってきた。
だが、先ほどから大翔の頭になにかが引っかかるような気がしてならない。
「では、私はこれで。」
「あ!ちょっと、待ってください!」
「どうかしましたか?」
帰ろうとする牧原さんを呼び止める。
「あの、最後に少しだけ聞いてもいいですか。」
「私に答えられることならなんでもいいですよ。」
今日を逃せば牧原さんに会う機会はもう2度とないかもしれない。
もしそうなれば、牧原さんに質問する機会はなくなってしまう。大翔が感じた違和感の正体がわからずに終わってしまうかもしれない。
その為、この機会を逃すわけにはいかない。
「美零さんは俺と牧原さんが接触することを止めてるんですよね。ってことは、牧原さんは美零さんとの約束を破ってここに来たってことですか?」
「はい。ですから、できるだけ早く戻らないといけないんです。」
「それっておかしくないですか。今まで約束を守ってきた牧原さんなら、こんな封筒くらい美零さんに渡してもらうよう頼むはずですよね。」
「・・・そうでしたね。急いでいたので頭がそこまで回りませんでした。次からはそうします。」
大翔が感じた違和感を牧原さんにぶつけていく。
すると、牧原さんの表情がどんどん曇っていった。
「いくら急いでいたとしても、牧原さんみたいなしっかりした人が、そんな簡単なことに気が付かないことはないと思うんですよ。」
「・・・何が言いたいんですか?」
「この封筒は美零さんに預けることができないもの。だから牧原さん自ら、約束を破ってまで渡しに来たんじゃないんですか?」
「・・・」
牧原さんからの返事はない。ということは、大翔の考えは合っているということだろう。
「この封筒の中身は何なのか?考えられるのは1つしかないですよね、それは、この封筒の中身自体が美零さんとの約束を破るもの、そうじゃないですか?」
「・・・」
「牧原さん。あなたは美零さんの何なんですか?あなたの目的は何ですか?」
【あとがき】
毎度のことですが、投稿が遅くなってすいません!
今回の話の内容なんですが、話を進めるために少し強引な感じになってしまいました。最後の方はちょっとした推理みたいになっていますが、少し慣れないことをしたので、なにかおかしな点があったら指摘していただけると嬉しいです。
コメント、フォロー待ってます!作品を評価してくれると嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます