謎の美人高校生?に大きな借りを作りました
ヤマダ
第1話 すべての始まり
『病院に行くので部活休みます。』
ずる休みすることをほとんど隠す気のないメッセージを部活のLINEグループに送信する。
今日はいろいろあって疲れたし、普段からサボってるわけじゃないから、たまには休んだっていいよな。
特に何も考えず、いつもと同じ道を歩く。いつも通り、何も変わらない。
――それが当たり前だと思ってた。――
✦
どこにでもいるごく普通の高校生。それが彼、
学校では真面目に授業を受け、休み時間は友達とくだらない話で盛り上がる。どこにでもいる、ごく普通の高校1年生だ。
高校生になってから初めての夏が終わり、少し肌寒くなってきたこの時期に今日のように太陽が隠れていると半袖では少し寒く。長袖で来なかったことを後悔する。
休むとは言ったけれど、特にやることない。しかし、部活をサボったためこのまま家に帰るわけにもいかない。
(そういえば、最近読んでる漫画の新刊の発売日って昨日だったよな。)
暇つぶしのために、大翔は家とは反対の方向にある本屋に向かうことにした。
駅につくと、本屋に向かうためにいつもと違うホームに向かう。平日の昼間のわりに人は多く、ホームの中心は混雑していた。
人混みがあまり好きではない大翔は人の少ないところまで歩くことにした。
エスカレーターから降りてホームの端近くまで歩き、そこで立ち止まる。
イヤホンを付けて音楽を聴きながら、電車がくるまで時間をつぶす。
携帯を見るとそこには部活の仲間から様々な内容のメッセージが届いていた。その内容のほとんどが部活をサボったことに対する憎まれ口だったが。
メッセージに返信をしていると、電車の到着が近づいていることを知らせるアナウンス音が聞こえてきた。
「キャーーーーー!!!」
(ん?なんだ今の)
アナウンスの音に交じっていたし音楽を聴いていたためはっきりとは聞こえなかったが、近いところから女性の悲鳴が聞こえた気がする。
(まあ、さすがにこんなところで事件なんか起きるわけないよな。聞き間違えただけだろ)
「っ痛い!誰か助けてください!!!」
今度は大翔にもはっきりと聞こえた。声の聞こえた方向を見ると、腕を刃物で切られたように、服が血で赤く染まった女性がこちらに走ってきた。
さすがに異常事態だと分かった大翔はイヤホンを外し、周りを見る。すると、血の付いたナイフを持って走る男が女性の5メートルほど後ろを走っていた。
状況はなんとなく理解できた。だが、どう対応したらいいのかが分からない。
駅員を呼ぶ?そんなの間に合うわけがない。
人が少ないところまで歩いてきたため、周りに人影はほとんどなく助けを呼ぶことはできない。かといってこのまま見逃せば、女性は逃げ場を失い、男につかまってしまうだろう。追いつかれたら男はあのナイフをどんなふうに使うかわからない。
踏切の警報音が大翔の焦りを加速させる。
当然のことだが今までナイフを持た人間と対峙したことはない。対処法もわからない。
怖い。自分が狙われているわけではないのに足が震えている。
何もしないことが正解なのかもしれない。このまま動かないでいても大翔が責められることはないのかもしれない。
でも...
それでも、このまま黙って見過ごすわけにもいかない。
幸い、男は女性を追いかけることに夢中で大翔のことは眼中にないようだ。
(もう、どうにでもなれ!)
大翔は手に持っていたジャージの入った袋を全力で男に投げつけた。
男は、まさか攻撃されるとは思っていなかったのだろう。不意の攻撃に変な声を出して倒れた。
その反動で男が持っていたナイフが大翔の足元に転がってきた。
周りを見て人がいない場所へナイフを軽く蹴る。
その間に立ち上がった男が再び女性に向かって走りだした。
なんとしても止めなければいけない。そう判断した大翔が道を塞ごうとする。
しかし、男は予想以上に早く、大翔が進路を阻むより先に女性のもとへ着いてしまった。
男の勢いは凄まじく、そのまま女性を線路へ突き落した。
線路を見ると、駅に停車しようとしていた電車が女性の目の前まで迫ってきている。
ホームの端近くまで来ていたため、電車のスピードはそこまで早くなかったが、このままでは確実に電車に跳ねられ、大怪我を負ってしまうだろう最悪の場合、命を失ってしまうかもしれない。
絶望と静寂で満たされた駅は、だれもが終わりを悟り、目を塞いだ。
彼を除いて、
電車が見る見るうちに近づいてくる中、空中で助けを求めるように手を伸ばす彼女と目が合った。
一瞬がとても長く感じる。まるで時間が止まっているかのように。
迷いは無かった。もとから選択肢は一つしかないようなもの、すぐに駆け出し、線路に飛び込む。
空中で彼女の手をつかみ、目の前のまで迫ってきている電車を避けようとする。
(これは避けられない。せめてこの人だけでも俺が守らないと。)
握っていた手を離し、電車から遠ざけるために女性を突き飛ばした。
その瞬間女性と目が合った。そのときの女性の驚きと悲しみで満ちた表情は一生忘れないだろう。
その後すぐに大翔の予想通り、右足は電車に直撃した。その勢いで隣の線路まで吹き飛び、少し転がったところで止まった。
痛い、痛い、痛い。痛みで頭が真っ白になる。すでに右足の感覚がほとんど無い。意識が遠のいていくのがわかる。
「......ぁああ、わた、...しの......せいで。し、死なないで。お願い、だからぁ」
ぼやけていく視界で女性の姿を映す。しっかりとは見えないが、男につけられた傷以外に大きな怪我はなさそうだ。
(ああ、俺は間違ってなかったんだ。ちゃんとこの人を守れたんだ)
大翔の手を握りしめ、泣きながら、懇願するように何かを叫んでいる。
全身から力が抜けていく。彼女は何かを言っているようだが、もう大翔には届かない。
自分の終わりを感じた大翔は、最後に一つの願いをつぶやき、目を閉じた。
(――――――――)
――この日を境に大翔の人生が大きく変わった。――
【あとがき】
最後まで読んでいただきありがとうございました。僕自身、物語を考えたのは初めてなので、こんなことありえないだろ!と思うところがあるかもしれませんが、これからも続けていくつもりなので、次の話も読んでもらえると嬉しいです。
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