第5話

私の命の背景に

愛なんてものはなかったから

きっと私は「寂しい」なんて

言ってはいけないと思っていた


それなのにキミは私に言う

言葉にもならない、音にすらならない、

ただ「私を思っている」と

その全身で伝えるのだ


なかったはずの愛をそこに見て

初めて私は寂しさを知る


だからそばにいてよ、と

私の傍から離れないで、と

言いたい言葉を飲み込んで

ただキミの袖をつかみ

寂しさをやりすごすのだ


これ以上なにかを知ってしまえば

きっと一人で立てない気がする


いつか与えられる別れのときに

私の心が耐えられないから

だからせめて今だけは

なにも言わずに隣にいさせて

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